友達
「ゲッホ!!ゴホッ!ぐは!」
咳き込んで、全身の痛みと共に目を覚ます。
「何…?ここどこ?」
宝くじを追いかけて池に落ちて、病院で目覚めた事を思い出す。
身体の痛みはその時の非ではないが。
「まだ寝てな」
そう声をかけられて横を見ると、そこには金の亡者、もといソルトさんが座っていた。
「なんか失礼な事考えてるねアンタ、まぁ何にせよもうちょっと寝ときな、ダメージが大きすぎたのかね…?回復魔法の効きが悪いんだ」
なるほど、ここは治癒所だ。
一命を取り留めた俺はここまで運ばれたのだろう。
「ちょっと…なんかよくわかんないんですけど…どうなったんですか?大襲撃は?」
「アンタがやったんじゃないのかい?」
「何をです?」
どうも噛み合わない。
「山の中腹からでも見えたくらいの爆発さね」
「爆発!?」
「そう、それで町の外の魔獣がかなり吹き飛んだみたいでね、残った魔獣も蜘蛛の子を散らすようにバラバラと逃げてったよ」
「あの熱い光はそれか…」
「アンタが爆発の中心辺りに黒焦げで転がってたって聞いた時は…肝が冷えたよ」
「黒焦げだったんですか…」
「生きてるのが不思議なくらいさね、全身叩きつけられて、足には矢が刺さり、爆発に巻き込まれ…」
「よくここまで回復しましたね…」
「まるで他人事だね…呆れた」
ポンとソルトさんが俺の足に手を置く。
「いつつ」
「でもまぁ無事でよかったよ、焦らなくていいからゆっくり治しな。とはいえ、バジ達が戻らなけりゃそれまでだがね」
「うーわ、性格わるぅ…!」
憎まれ口を叩きながらソルトさんが退室する。
「ジン…」
入れ替わるように入ってきたのはジェノさんだった。
「いやーカッコ悪いとこ見せちゃいましたねー」
「……ぃなんだ…」
「え?」
「私のせいなんだーー!!許してくれー!!」
ガバーーっと俺に抱きついてくる。
もの凄く身体中が痛いが、これは役得なので黙って流れに身を任せる。
フワリといい匂いが…うーんこれは幸運101なだけはあるわ、俺。
「何がジェノさんのせいなんです?」
「爆発の後…魔獣が退散して…」
「うん?」
「避難してた人達が戻ってきたんだ…」
「はい、まぁそうでしょうね」
「君はもう治療所に運ばれた後だったし、私は暴動や盗みの被害にあった人達の手助けに向かったんだ…」
「ポーションも勝手に持ってきちゃいましたしね」
「それなんだが…」
グスン目に涙を浮かべながら続ける。
「道具屋の主人もそこにいたんだ…だから謝罪と支払いをしようと近付いたんだ…」
「はい」
「そしたら…主人がこう言って嘆いていたんだ…」
『うわぁ!お金が盗まれてる!昨日行商人から買った超レア級の液体爆薬もだ!!なんてこった!!』
「ん?」
「多分…その…」
「まさか…」
「君に渡したポーション…あれな…」
鬼があれを踏みつけた途端に視界が真っ白になった瞬間を思い出す。
「液体爆薬だったかもしれない…というか…多分そう…」
「疫病神じゃねーか!!!!」
「うわあああああすまないいいいい!!」
思わず辛辣なツッコミをしてしまった俺に対し、ジェノさんはベソをかきながら謝る。
「飲んだら帰ってこいとか言ってたけど、飲んでたらその場で死んでたじゃねーか!!」
「ほじくり返さないでくれえええ!!!すまないいいい!!」
「…はぁーーー!」
「うううぅぅ…」
超特大の溜め息を吐きながらも、俺の顔はニヤけていた。
「いいよもう、俺の事を心配してくれた結果だろう?こうして俺も無事で魔獣も追い払えた訳だし、終わり良ければ全て良し!」
「ジンーーー!!!」
またしてもギュッと抱きつかれる。
これ以上はいけない!なんだかほら、男の子だから!
「ともぢ…友達だろ?」
馴れない言葉だから噛んでしまった、せっかく格好良くキメる所だったのに。
「どもだぢーーーー!!!」
あーあー、涙と鼻水が!あーあー!
初めて会った時のイメージが崩れまくってるぞ!
「青春だねぇ…アタシもともぢ…友達でいいのかい?」
ドアの外にいたソルトがからかってくる。
「何を言ってんだ、俺は勝手にそう思ってたぞ」
「ククッ、治療費は友達料金にしといてあげるよ」
「取るのは取るんだね」
前世では叶うことのなかった夢の一つ。
俺に初めての友達ができたのだった。
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