運を掴め
目を覚ますと
そこは真っ白な空間だった。
だだっ広い、何もない、果てすらない空間。
「お目覚めですか?」
うおっ!と体をビクつかせ振り返る。
「誰ですか…?俺はなんでここに?」
「私は…所謂、神ですかね?貴方達の言い方をするならば」
目の前のなんだかヒラヒラした格好をした女性はそう答えた。
「あーー…死んじゃいましたか俺は…」
宝くじを追いかけて惨めに死んだ事が思い出される。
「という事は…ここは天国とか地獄ですかね?不幸でしたが悪い事はしてないんで…地獄とは思いたくないんですが」
「いいえ、ここは輪廻の間です」
「輪廻の間…?」
俺は馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返す。
「言ってみれば貴方の次の人生を決める場所です」
「なるほど…輪廻転生ですね」
「理解が早くて助かります、それでは早速」
「いやいや早いですって、もうちょっと教えて下さいよ!」
「そうですか?では簡単に次の人生について説明させて貰いますね」
「よろしくお願いします」
「まず、貴方の今の身体能力、記憶力、記憶内容等は健康だった頃のまま引き継がれます」
「ん?」
「生まれ変わりというよりはそのままの貴方が違う世界に行くと思ってもらったほうが近いかもしれませんね」
「はぁ…」
「その世界では今までの世界と違う理(ことわり)が働いています、そのうちの1つがステータスと呼ばれる力です」
「おお!」
「貴方の能力が具体的に数値化されていますし、さらにその数値をご自身で増やす事も可能になっています!」
「おおお!!!」
「では早速…」
「ちょま…まった!待ってくださいって!俺はそこで何をすればいいんですか!?」
色々と魅力的な話ではあるように思えるが、いくつか気になる事があるので聞いてみる。
「どう生きて頂いても構いませんよ?私は貴方をその世界に送るだけのただの導き手です」
「そうなんだ…」
意外な返答に拍子抜けする。
ステータスなんて単語が出てくるもんだから、魔王を倒すだの勇者になるだの言われると思ったのだが…
まぁそれはそれで憧れないと言えば嘘になる。
「俺は前世ですごくツイてなかったんですが…」
「ええ」
「それも引き継ぐんでしょうか?」
「そうですね…ステータス的にはそうなると思います」
1番気になっていた事を聞いたが、1番聞きたくない返事が返ってきた。
「な…なんとかなりませんか?生まれ変わってもすぐ死んじゃったら意味無い気がするんですが…」
「ふふふ」
「ふふふ?」
「先程言ったように次の世界はご自身でステータスの数値を増やして頂く事ができる世界です」
「はい」
「生前あれだけ不幸だったにも関わらず腐らず生きた貴方に…」
そこで女神様はタメを作る。
どこからかドラムロールが聞こえてきそうだ
「なんと自由に割り振れるポイントを100ポイント進呈しちゃいます!!!」
「おおおおおおおおおお!!!」
「ただし…割り振れる時間は1分しかありません!」
「おおお!?」
「それでは始めィ!!!」
「な!?」
それは急に、本当に急に始まってしまった。
瞬間、目の前に所謂、ステータス画面が現れる。
ズラーっと並ぶ項目に自由に100ポイント割り振れるのだ。
「おい!なんだこれ!ふざけんな!」
俺がそう叫んだのはその項目にザッと目を通したからである。
「ありすぎだろ!!項目!!!」
そこにはあり得ないくらい細分化された項目が所狭しと並んでいたのである。
握力【右手】、握力【左手】、腕力【右手】、腕力【左手】、視力【右目】、視力【左目】、等々。
「視力は分けるなよ!極端に違ったら遠近感グチャグチャで生活できなくなるだろうが!!」
他にも
魔力【火】、魔力【氷】、魔力【土】、魔力【風】、魔力【光】、魔力【闇】、や
剣術【右手】、剣術【左手】、剣術【両手】、等
ゲームなら間違いなくクソゲー認定される事間違い無しだ。
「はーい、あと30秒でーす」
「マジでふざけんな!!」
だが俺は、俺だけはここで迷う必要がなかった。
「運!運!!」
そう、俺の目標はツイてる人生だ。
だからポイントは全て運に振り込めばいい!
「脚力、違う!弓術、違う!!どこだーどこだー!」
「あと20秒ー」
「そもそもなんで時間制限があんだよ!!」
ステータス画面をスクロールし続ける。
そして時間切れギリギリでついにそれを見つける。
幸運
「あったぞこのやろぉ!!ポイント全てこの幸運につぎ込むだけだーー!!」
ダダダダッと画面を連打し
全てのポイントを幸運につぎ込む。
時間いっぱい、ポイントが割り振られたと同時に女神様の声が響いた。
「無事サービスポイントは割り振られましたー!」
白い空間がグニャリと歪む
「それではいってらっしゃい」
その声を聞きながら、俺はまた意識を失った。
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