不幸転生

腹ペコ

俺の人生

はじめまして、まずは自己紹介から。

俺は「葛西 仁(かさい じん)」

昔は「かんさいじん」なんて呼ばれてよくからかわれたりしたもんです。

どうでもいいって?ごもっとも。

でも少しだけ俺の人生について聞いて貰えないだろうか。

まぁまぁ、長い人生の時間つぶしと思って、な?


俺の人生を一言で言い表すとしたら、「不幸」以外の何物でもないだろう。


幼い頃に両親を事故で無くしたのを皮切りに、交通事故多数、盗難、引き取って貰った叔父の家にはトラックが突っ込む等、とにかく不幸にみまわれた。

細かい不幸も言えば、毎日のように鳥に糞を落とされたり、俺の分だけプリンがなかったり…財布をしょっちゅう無くすなんてのも…いや、これは俺の不注意なのかもしれないが。

当然周りからも不気味がられるわ、親戚中をたらい回しされて転校続きだわで友達なんかもいやしない。


だけどな、そんなわけのわからん「不幸体質」な俺にもすげー幸運がやってきたんだ!


それが!宝くじの当選だ!

しかも1等!3億の超高額配当だ!

今までの不幸はこの時の為の布石だったんだと信じて疑わなかったね!


とはいえ、すぐに銀行に向かった俺にまたも不幸はやってくる。

カラスに当選くじを奪われるなんて漫画みたいな出来事だ。

昔から糞をかけるだけで飽き足らず…俺の人生においてカラスは敵だね。


けどさすがに俺も簡単に諦められるもんじゃない、そりゃそうだろ?

だから追いかけたさ!無我夢中で空を舞うカラスをな!

走って!走って!走って!!


気が付いた時には病院のベッドの上だったよ。

注意不足だったんだな、どこかの公園の池に落ちたあげく頭を打って気絶のコンボらしい。

不幸体質はどこまでいっても不幸体質なんだろうな…


なんて悲観的になっていたんだが、ここで予想外の幸運があったんだ。

どうも俺はギリギリで宝くじを取り返していたみたいでな!

運んでくれた看護師さんが俺の枕元にクシャクシャになった宝くじを置いていてくれたのだ!

凄いだろ!

泣いたよ!頭を打ったせいかうまく声は出せなかったけど、すげぇ感謝した。


退院したらすぐ金に替えて、お礼にいくらか包まないとな…なんて考えてたんだけど…

なんだろうな、一向に身体が動かないんだよ…

うまく声も出せなくなって…



「あの患者さん、池に落ちた時に悪性のアメーバが鼻から入っちゃったんだって…」

「脳を溶かすってやつ?」

「もう長くないみたいよ…」

「あの枕元の宝くじは?」

「患者さんが握りしめてたみたいで置いてるんだけど…」



「番号は一緒だけど組違いで1円も当たってないみたいよ…」



そんな会話を聞きながら

生まれ変わるなら幸せな、ただひたすらにツイてる人生がいいな…

そう思った。


そして俺の意識は途切れたんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る