#42 継海と愛実 (4/5)
北へ向かう道中、三種の神器の詳細を皆から聞き、メモを取りながら歩く傑。
「なるほど、霊的な力の振る舞いを量子論でシミュレートして、一度低次元に書き直し、ヒトを補助媒体として観測結果を強制的に・・・・・」
その姿を気に掛ける
「あの尾上さん?研究熱心なのはわかりますけど、敵も出ますし歩くのに集中してください。私たちと違って、神器の加護も無いんですから」
「ああ、すまない。足手まといにはならないよう気を付けるよ」
そう言いつつも、聞き取った情報以上の量を、メモ帳に書き込み続けている傑を見ると、彼女は半ば説得を諦めた。ため息をついた斐瀬里にツグミが、
「斐瀬里、父さんの行動は私が責任を持って見ます」
「ふふ、もうしっかり親子だね」
イナホは後方でのツグミたちのそんな会話を聞き、笑顔を零すと三月の写真の入ったペンダントに手を当てた。
その一方で、先ほどから複雑な表情を見せる悠に慶介が、
「悠、さっきから何か考え込んでるようだけど大丈夫?」
「いや、ツグミの開発者、あの父親は結構な変わり者だが、親としてはまともなのだなと思ってな。それに比べ俺の父は・・・。皮肉なものだよ、あの事件がなかったら、俺はここに来る勇気は無かったかもしれないと思うと。あんなクソ親父でも、何か俺に与えたのだからな。それが意図したものではないにしても」
「確かに何とも言えないね・・・。でも、悠がここに居るのは、それだけが理由じゃないだろう?」
悠の脳裏にメイアの言葉や、仲間たちに励まされた記憶が蘇る。
「そうだな、すまない。少し、羨ましかったのかもしれないな。ところで司。秋津国に戻ったら、あの子と結婚するのか?」
その質問に百花が食いつく。
「お、何々?悠も実はそういうのに興味あり?」
「ただの質問だ。深い意味は無い」
司が頬を掻きながら目線を外して答える。
「う、うん、そのつもり。もちろん、もう少し大人になったらだけど」
「そうか、俺たちが生きて帰れれば、近衛隊の中でもそれなりの階級を与えられるはずだ。あの子も鼻が高いだろう」
百花が手を後ろに組みながら悠たちの方を向く。
「あ、それそれ。あたしの活躍もみんな正直に報告してよね?あたしも偉くなって、部下とか率いちゃうのかなー」
悠が鼻で笑い、
「なんだ、正直に報告していいのか?お前が上司になる部下達も可哀想だな」
「ちょっと!それどーゆー意味?またバカにされてるんですけど!ま、悠の調子が戻りつつあるって事で許してやるか。今のも報告ね!あたしの器のデカさ的な?」
爛漫な百花に香南芽は少し呆れながら、
「ももっち、報告書と武勇伝は違うんだぞ・・・」
旅がそれぞれをあらゆる意味で成長させつつあった。機械達の襲撃を退けながら、イナホ達が進む事二日。
先頭を歩くイナホが前方を指刺した。
「あれ登山道の入り口じゃないかな?そろそろ日が暮れるから、どこか開けたところがあったら野営しよう」
イナホの提案に皆が返事をしようとした時、西日に照らされた何かが、視界の端で眩しく光った。そちらに目を向けると、自分たちの三倍は背丈がありそうな人型の輪郭があった。それがゆっくり向かってくると、神器の中から土龍が声を響かせる。
「いかん!あれは神殺しの白き鉄の兵!!」
全員が戦闘に備えるとツグミが傑に下がるよう伝える。
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