私の描くヤンデレエロ漫画にハピエンと詳細を求めるな!
田作たづさ
私の描くヤンデレエロ漫画にハピエンと詳細を求めるな!
★★☆☆☆(星2)匿名さん
エロいですが、ストーリーが微妙。特にエンディングが……。
★☆☆☆☆(星1)匿名さん
ストーリーが薄い。夫の心理や過去が描いてないから、なぜあのような行動をしたのか分からなかった。ヒロイン(妻)が可哀想で気分が悪くなった。ただエロいの描けば良いと思ってそう。
「このクソがっ!! 好き勝手書きやがって!!」
風子は仕事の傍ら、成人女性向けのオリジナル漫画を描いて、同人作品として販売している。既に今までに3作品描いて、世に放った。1作目は幼馴染もの。2作目は異世界転生もの。そして1週間前に販売を開始した3作品目が夫婦もの。タイトルは、「結婚5年目の完璧な夫は私のストーカーでした 今更気付いても遅いよ? 諦めないなら[ピ──]するから」である。どの作品もヒーローがヤンデレで、ヒロインを狂気的に愛しているという設定だ。風子は今、3作品目に対して書かれた評価コメントを読んでいるのだった。
ソファーに横たわり携帯ゲーム機で遊んでいる
「風子ビール飲み過ぎじゃない? 個人の感想なんだから色々な意見があるでしょ。受け流せって〜」
「ムリムリ! 作品は自分の子と同じなの! 自分の子に悪口言われたら怒るのは当然!」
「悪口ねぇ?」
華奈はめんどくさそうにソファーから起き上がった。ぐっと伸びをして、ゲームの電源を落とす。そして風子の座っているダイニングテーブルへと、ゆっくりと歩みを進める。
「てかこれ全部ノンアルビールじゃん……」
「最近のノンアルはホンモノと遜色ないの! 美味しいの!」
「いや、ノンアルには文句言ってないから。あたしも美味しいって思うし。アルコール入ってないのに荒ぶる風子が普通に怖いって話」
風子はテーブルに顔を伏せた。そしてわざとらしく声を出して泣いた。いや、正確に言えば涙は出ていないので泣いたふりをした。
「はいはい。大変ですね〜。絹豆腐メンタル」
華奈はめんどくさそうに風子の頭をポンポンと撫でた。それはそれはめんどくさそうに。
「見てよ! この新作へのコメント!」
風子はガバッと顔を上げ、スマートフォンの画面を華奈に向けた。全く潤んでいない風子の瞳を見て、華奈は若干呆れつつも、いつものことだと受け流した。そしてスマートフォンに表示された評価コメントに目を向ける。
「ただエロを描けば良いと思ってそうって……私はそれで良いと思ってるわ! エロマンガはエロが正義でしょうが! それのどこが間違っとるんじゃ!」
「うーん、でも的を射てる部分もあるんじゃない?」
「……え?」
「だって風子の漫画って心理描写や人物の過去に関する描写が少ないし、ストーリーも毎回バットエンドじゃん」
風子は華奈からスッと目を背けて、唇を尖らせた。まるで不貞腐れた子供のように。先程までの勢いは、もうどこかへ消え失せたようだった。
「だって〜。登場人物の心理を描写しても、天然もののサイコ野郎が多いから、どうせ理解してもらえないし。それにやっぱりメインはエロだから。細かい心理描写や過去編入れるとテンポ悪くなるし。あえて最低限しか描かないで、読者の想像に任せようと思ってるの。ちゃんと考えた上で詳細を省いてるわけ」
「ふーん。風子のくせにちゃんと考えてんだ」
「それにバットエンドじゃないの! あれはハッピーエンドなの!」
「いやいや、それは全然納得できないわー。だって毎回ヒロインが酷い目に遭ってるじゃん。今作でもヒロインが最後に[ピ──]されてたじゃん。確かにヤンデレのヒーローは幸せそうだったけど。あれだっけ? メリーバットエンド?」
「う……」
風子の目が泳ぎ出した。右往左往と、それは優雅に泳いでいる。
「やっぱりハピエン好きにとっては微妙なストーリーって思うんじゃない?」
「まあ……ね」
「そこはすんなり認めるんだ」
「うん、まあね。そういった意見もあるよねって思う」
風子は溜息を吐いて俯いた。華奈は眉を顰めた。風子のことが心配になったからだ。珍しく本当に落ち込んでしまったのではないかと。
「でもね。私はやっぱり……」
顔を上げた風子は、顔を紅潮させていた。まるで恋に恋する乙女のように。風子は両手を胸の前で祈るように組んだ。そして熱に浮かされたような潤んだ瞳で、幸せそうに宙を見つめる。
「私はやっぱりヤンデレには幸せになってほしいの。だって他の人よりもほんの少し、ちょびっとだけ愛が重いだけだから。ヤンデレって当て馬キャラとして出てきたり、悪役として出てきたり……好きな人と結ばれなくて可哀想なの! だから私の漫画では、幸せになってもらう! ヒロインを[ピ──]したり[ピ──]させたり[ピ──]したり! あの手この手を使って、彼らなりの愛を存分に伝えてもらうの!」
「おー。そのいきだー。がんばれがんばれー」
心配をして損をしたと華奈は思った。風子のメンタルは、絹豆腐ではなくカチカチに乾いた高野豆腐だったのだ。いやもしかすると豆乳かもしれない。どちらにせよ、風子は周りから何を言われようが、好きなものを好きなように描き続けるのだ。
風子は宙を眺めてニヤニヤしていたが、突然「あ!」と言って紙に何かを描き始めた。新作の構想が浮かんだのだ。「改心いらぬ……」「私にとってはハピエン……」「語らない美……」などとブツブツ言っている。この状態になると、華奈の問い掛けには全く答えない。
華奈は溜息を吐いた。ダイニングテーブルの上に置かれた未開封のノンアルコールビールを手に取り、周りに付いた水滴を服の袖で拭った。
「ぬるいけど飲むか」
華奈は目の端に、風子のスマートフォンを捉えた。電源が入りっぱなしのスマートフォンに指を伸ばす。そして少しだけ画面をスクロールする。
「なんだ。他にもコメントあるじゃん。風子のバカやろう」
★★★★★(星5)ゆーちゃんさん
今回も凄く良かったです! とにかくエロかったです!
★★★★★(星5)家庭菜園さん
このエンドめっちゃ好きなやつでした。こういうの求めてた! 私に刺さる作品!
★★★★★(星5)玄米大好きさん
ストーリー部分長いと疲れるので、エロ重視で良かった! 個人的には細かな心理描写はなくても良い派。エロは地球を救う!
私の描くヤンデレエロ漫画にハピエンと詳細を求めるな! 田作たづさ @2801255
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