第8話 銀狼様とふたりの重鎮
翌朝、山のようなお詫びの品と手紙がリクレーン公爵家から届いた
「え?こんなに」
「こんなにじゃあありませんよ
こんなことでは本当にすまされませんよ」
とスタンがぷりぷり怒っている
「そうですよ 今回ばかりはこの子の言うとおりです
私なんて昨日のセシル様のお姿を見て気を失いそうでしたもの」
確かに・・・・あの時は使用人全員が声を出しそうなぐらい驚いていた
「返せ 受け取らん 持って帰れ」
「でも、辺境伯様受け取らないと後でお困りになるのでは・・・」
「困らない」
「辺境伯様・・・」とやりとりをしていると
「セシル、其奴の言うとりじゃ受け取る必要などない」
と屋敷の入り口の方から聞こえる聞き覚えのある声の主の方を見るとイワン・ガブリエル元将軍閣下とショーン・ラドラー元宰相であり公爵様が立っていた
「イワン様 ショーン様久しぶりでございます どうされたんですか」
「おお!セシル久しぶりだな 会いたかったぞ」
とイワン様が私を抱きしめ思い切りハグして頬擦りをする
ショーン様がイワン様から私の体を離して
「こら、このクマみたいな髭面で頬擦りしてはセシルの可愛い顔に傷がつくだろう」
「なんだと・・・まあ・・気をつける」とイワン様は大きな体をしゅんとさせる
「イワン様 私は嬉しかったですよ」
「おお!そうか!」
「もう、だめだ 可愛いセシル突然訪問してすまなかったね くる前に知らせようとしたんだがこのクマがすぐ行くと朝から邸に来てうるさかったのでね」
とショーン様は赤い薔薇の花束を渡してくださった
ショーン様相変わらず容貌とご一緒でスマートで素敵だわと思っていたら周りのサマンサだけでなく侍女様も皆さんショーン様に見惚れていた
イケおじってこの方の事よね でも一方のイワン様がいらしていることを聞きつけて騎士団の皆さんがひとめイワン様を見たいと演習場から集まってきた
「ガブリエル様 ラドラー様本日はどのようなご用件でいらっしゃったのですか」
とそれまで黙っていたユリウスが口を開いた
「ああ、ザンダーの小倅久しいの お主わしらはそなたとセシルが婚約したなど聞いておらんぞ」
「その上、あのバカ娘にセシルが茶をかけられたと聞いたのだがよもや本当のことではないだろうな」
と二人はユリウス様に顔がつきそうな勢いで攻め寄る
「突然のことでお知らせはまた婚約式の招待の時にと思っておりました
それに・・・・まさかお二人がセシルと面識があったと言うことを知ったのはつい先日のことでございました」
「ふん、それで本当に茶をかけられたのか?」「やけどはしてないか? 」
と二人は私に優しく問いかける
「ありがとうございます 大丈夫ですよ」
「そうか 怖かったであろう可哀想に」
「ガブリエル様 ラドラー様よろしければご朝食ご一緒にいかがですか」
とサマンサが声をかけると
「おお、サマンサも久しいな いただこう」
と二人は私を挟んで食堂へ向かった
「ああ、その積んであるものあのバカ娘の家に返しておけ」
「ユリウスやセシルに文句言ってきたらわしが捻り潰してやる」
とイワン様が手を振りながら怒っている
そうして賑やかに食堂へと向かった
「セシルもしばらく王都にいるなら私たちとまた会ってくれないか
チェスの相手になるものがいなくてな どいつもこいつも弱すぎる」
とショーン様が食後のお茶を召し上がりながらおっしゃった
「そうしましたら、この後いかがですか」
「おおそうか! ではトーマス後ほど用意してくれ」
「イワン様もショーン様もザンダー辺境伯様と懇意にされていらっしゃるんですね」
「ああ、ここの亡くなった爺さんとな」
「すごく嫌なやつでな でも夫人がすごく良い淑女でな
我妻とも仲良くしていたのでな」
「わしも同じようなものだな どうしてここの家のものは嫁に恵まれるんだろうな」
「ユリウス!セシルを蔑ろにするとわしらが許さんぞ」
「心しておきます」
そんな話をしながら朝食を楽しんだ。
その後ショーン様と私はチェスをし、イワン様はといえば
「よーし!久しぶりに体を動かすか」
と仰ってユリウスと騎士団と演習場で剣を交えていた
イワン様と並び汗を流している姿がとても楽しそうに見えた
私もショーン様とチェスを指す時間がとても楽しく昨日の嫌なことを忘れ楽しい一日となった
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