第5話  銀狼様と王宮へ

 翌日、いよいよユリウス様と王宮へ

 彼は黒のタキシードに青銀のクロバットをして私は白い生地に薄青銀とシルバーの糸で刺繍を施したドレスを着て国王陛下の元に訪れた


 国王陛下は赤い髪色に赤い瞳 王妃様はブロンドにチェリーピンクの瞳

 二人の王子たちも第1王子のシトエ王子は赤い髪に赤い瞳 第2王子はクロシュ王子はブロンドに赤い瞳だ

 王家の血筋のみ赤い瞳を持って生まれてくる


「辺境伯久しいのう どうだ今回の縁談気に入ったか」


「お久しぶりでございます陛下 

 この度はお気遣いと素晴らしいご縁を結んでいただきありがとうございます」


「お主はどうじゃ・・・え・・名はなんと申すのじゃ」


「失礼いたしました陛下 初めましてゴールドウィン伯爵家長女 セシル・ゴールドウィンと申します」


「セシルか・・・そうかこう並ぶと似合いじゃの」


「田舎の伯爵家の娘なんてユリウスには丁度いいお相手ですわね」

 え? 王妃さ・・ま・・・?思ってても口に出さないでほしいわ」


 それにしても、ユリウス様に対しても失礼だし、私にも凄く失礼だわ

 とニコッと笑いながら心の中の私は、怒りで大暴れしていた


「はて、お主どこかでみた顔だな・・・」


 第一王子のシトエ様どこかでみたも何もほらそこに同じ顔がもう一つあるじゃない


 実は今日婚約誓約書を「魔法誓約書」でかわすことになり魔塔から魔術師が5名きてるのだけどその中に兄のルーカスがいるのだ


 まだ魔塔に入ったばかりだというのに既にエリートコースまっしぐらだ 

 本当にすごいよお兄様


 神殿からも神殿長まで呼んでいていたせりつくせりだがこの「魔法誓約書」サインしてしまうともう本当に婚約破棄なんてできなくなるのだ

 そこまでして国王が進める結婚が本当に私でいいんですか?

 ユリウス様!って叫びたくなる


「あの・・・・・ もう本当に引き返すことできませんよ・・・辺境伯様 本当にいいんですか?私で・・・」

 と小声でユリウスに確認をする


「・・・・・ 問題ない」前を向いたまま無表情で返事をする


 神殿長の前に行き魔法誓約書にサインすると今度は魔術師に契約書を渡すと魔術師が全員で呪文を唱えだした 

 神殿長が婚約承諾書にサインをすると契約書は青白い炎に包まれ消えてしまった


 何か一つのショーでもみているような気分になった私は、思わず「ほぉ」と関心の声を小さくあげてしまった

 すぐ近くにいたルーカスに聞こえたのがめちゃめちゃ睨まれた

 もう睨まないでよとばかりにルーカスを睨み返している所をユリウス様に気づかれた

 ユリウスも目の前の魔術師と婚約者が同じ顔なのに気がついたようで初めて彼の顔がぴくりと動いた

 そのことの方に私は驚いた


 滞りなく国王陛下家族との謁見と婚約の誓約が終わり王宮を後にした


 これでもうユリウス・ザンダー辺境伯様の「婚約者」になってしまった

 そのうえ魔法誓約書で交わした婚約なので絶対婚約破棄はできない

 でも・・どうしてなのだろう? 結婚の時も魔法誓約書なのかしら?

 政略結婚だからかしら? と疑問は少し残るけれど考えすぎてもどうしようもない

 辺境伯家の婚約者としてこれから花嫁修業を頑張らないと決意をした


 邸宅に帰ると使用人や騎士団のみんながお祝いの席を用意してくれていた

「辺境伯様、セシル様ご婚約おめでとうございます」


 みんなにこやかにお祝いしてくれている

 やはり、ユリウスは相変わらず無表情で何か話しかけられても「ああ」とか「そうか」くらいしか話さない

 話しかける方も特にはユリウスに何かを求めているようでもない

 それがいいことなのか悪いことなのかは私には今はよくわからない

 でもまだ始まったばかり少しずつ様子を見ながら答えを見つけていこうそういう風に彼等を見ながら思ったのである


 部屋に戻りバルコニーに出ていると扉がノックされユリウスが入ってきた


「あの魔術師は君の双子の兄か・・・」


「はい、そうです

 やっぱり知ってらしたんですね 

 今日はあのような場できちんと挨拶できませんでしたがまた改めて兄と共にご挨拶させていただきたいと思っております」


「ああ・・・・それで・・・・ 

 今日婚約したわけだが無理に私のことを愛さなくてもいい」


「え?」


「無理をしなくてもいい 婚約者だからといって愛する必要はない」


「あの、おっしゃっている意味がよくわからないのですが・・・・

 辺境伯様 安心してください 私無理していないですよ 

 まだ短い時間しか経っていませんが私ザンダー領の皆さん好きです 

 そしてあなたのことも正直まだよくわからないこと多いですけど好きになっていると思います 

 うん、かなり好きかもだから覚悟してください」


「覚悟・・・・ 」


「そう覚悟してください」


「う・・・好きにすればいい」

 そう言ってユリウスは部屋を出ていった


 私が彼を好きになっても彼が私を好きになることはないかもしれない 

 でもあんなことわざわざ言いにくるなんて勇気がいることじゃない 

「無理しなくていい」という言葉が私には切ない言葉に響いたのだ  

 それまでに感じたことのない愛おしさを彼に感じてしまったのだ

 ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇


 扉をバタンと閉めた途端に顔が熱くなっていくのがわかる

 こんなことは初めてだ・・・ 俺はどうしてあんなことわざわざ言いにいってしまったんだろう

 そして・・・セシルがあんな返事をするなんて・・・


「はん、あんたがそんな顔するなんて珍しいな」

 その黒髪の男がいつの間にか部屋の片隅に立っていた


「シャド・・・」


「あのお嬢さんにまた会えたからって浮かれてるんじゃないか」


「そんなことはない お前こそいきなり現れて・・・」


「お前に忠告に来たのさ 散々あの爺さんに痛ぶられて教育されてきたのに懲りていないのかよ 

 お前は何の感情も持つなと誰にも愛されるな 

 お前には愛される資格などないと言われ続けただろう」


「ああ・・・」


「お前は 人を不幸にする生き物なんだから忘れるな」


 そう言ってその男は闇夜に消えた


「シャド・・・お前のように自由に生きれれば・・・」

 ユリウスは思わずソファに身を預け宙を見つめた




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