第3話  銀狼様とはじめてのお出かけ

 次の日の朝小鳥の囀りで目が覚めた


 ん?小鳥の囀りで目が覚めるなんて嫌だ寝坊した?

 朝ごはんの支度手伝わなきゃ・・・・とがばっと起きたら見たことのない部屋だった・・・

 あっ・・・・そうか私お嫁に来たんだったけというかまだ婚約者?婚約者見習い?まあとりあえずウチじゃないんだった


「セシル様お目覚めですか 入ってもよろしいですか」


 サマンサの声がしたサマンサが入ってきて

「さあ、朝のお支度いたしますね 朝食はいかがなさいます?」


「サマンサ、支度は自分でできるわ

 朝食は辺境伯様と宜しければ朝食がご一緒にさせていただければ嬉しいわ」


「あらお支度は私どもでいたしますよ 

 セシル様 私どもの仕事を奪ってはいけませんよ」

 サマンサが笑いながらそういいながらドレスを選んでくれている


 ああ、そうだここは辺境伯だったわ・・・うちと違って使用人の数も多いだろうし 

 そうよね、郷にいれば郷に従わないとね・・・


「そうね ごめんなさい お願いします」


「ふふ、セシル様は本当に素直なお方なんですね」


「あら、そうかしら兄にはお前は捻くれているってしょっちゅう言われていたわよ」


「まあ、それはお兄様の照れ隠しかもしれませんね」


「そうなの、実は兄の方が捻くれているのかもしれないわ」

 と思わぬとことで話題になっていたルーカスだった


 そして、辺境伯様との初めての食事


「おはようございます 

 改めまして ご挨拶いたします ゴールドウィン伯爵家長女 セシルでございます 

 よろしくお願いします

 お礼が後になり申しわけございません ザンダー辺境伯様昨日は助けてくださりありがとうございます」


「ああ、もう大丈夫か」


「はい、それとこんな素敵なドレスも用意してくださりありがとうございます」


「それはサマンサが用意した」


「とても嬉しいです!ありがとうございます」


「ああ」

 口数は少ないけどちゃんと返事してくれてるわ


「辺境伯様使者様から王都にご一緒に行くようにと伺っています」


「明日、でる 大丈夫か」


「はい、私はもう元気ですから大丈夫ですよ」


「ご主人様 王都まで4日かかります 

 セシル様のお荷物が先日に事故で駄目になっておりますので、お洋服など少し買い足されてはいかがでしょう」

 とサマンサがユリウスにお茶を出しながらいうと


「好きにしろ」


「ではお食事終わられたらご主人様もお出かけの用意してくださいね」


「私もか」カップを持つ手がぴくりとした


 あら・・・・この人よく見ていると表情には出ないけどよく見ると違うところに感情がでるタイプなのかしら・・・・

 とついついユリウスを観察しながら食事をしていると視線を感じた

 そっと視線の先を見るとシルバーグレーのおじさまが私を見ていた


「あの・・・」


「失礼しました、お食事中申し訳ございませんご挨拶遅れまして私は執事長のトーマスでございます 

 後ほどきちんとご挨拶するつもりだったのですが申し訳ございません」


「いえ、トーマス 私の方こそ失礼しました

 セシル・ゴールドウィンと申します 昨日はあんなことがあったのでちゃんと入城できず、みなさんにご迷惑おかけしたわ」


「そんなことございません

 セシル様がいらしてくださり私達使用人一同本当に喜んでおります」


「ありがとうございます」

 わー!優しい笑顔に癒されるおじさまだわ 

 サマンサの旦那様ね本当に優しい素敵な家族なのね

 でも、こんな優しい家族に囲まれて生活しているのにどうしてあんなにユリウス様は無表情なんだろう まあ、あんまり詮索するのもね・・・・

 それにしても、ユリウス様って観察しているとなかなか面白いわ


 実はセシルは人間観察が好きというかクセになっているのだ

 子供の頃から前に出ていくタイプいわゆる目立つタイプではないがで後ろのほうで観察するタイプ 

 そして、できるだけ気づかれないように問題を阻止していくタイプなのだ

 本人曰く平和主義者だそうだが兄のルーカスから言わせるとそういうところが捻くれているのだと言っている


 そして、会って2日目いきなりの初めてのお出かけとなったのだが馬車の中でも辺境伯は無表情で外を見ている

 そんな辺境伯を見て何故かニコニコしているセシル


 従者のスタンは、そんな二人を見ていてこのお嫁様ならご主人の心の氷を溶かしてくれそうだとほのかに期待をしていた


 町に出ると活気があり商店にも珍しいものや美味しいそうな出店も並んでいた


「わー!お店が沢山あるわ」


「セシル様先にドレスから選びましょう」


「はい、ありがとうございます」


「取り急ぎ本日持ち替えられるもので、ドレスは2枚動きやすいワンピースを3枚予算はこれだけでお願いします」

 とセシルが決めていくと


「・・・・・」無言で無表情だが何か言いたげな辺境伯


「セシル様代金はこちらでお出しいたしますので予算など、お好きなだけご購入くださいませ」


「スタン ありがとうございます 辺境伯様 お気持ちだけいただいてもよろしいですか? まだ本当の婚約者ではないですし、これから結婚になりますと沢山入り用になりますのでとりあえず今日のお買い物の予算は自分が決めた範囲での金額を守らせてください」


「そうですね、セシル様にお任せいたします」とスタンがニコニコ笑った


 ユリウス様は相変わらず無表情でただ私を見つめていた


「辺境伯様、お気を悪くなされていませんか?

 なんでもはっきり仰ってくださいね 私は大丈夫ですから」


「大丈夫だ、服のことはわからん 任せる」


「ありがとうございます」と笑うと

 ユリウス様の指がぴくりと動いた


 その後、町の商店や出店も見て回った

 領民の人たちは最初やはりユリウスに対して怖いイメージなのか遠巻きに見ていたが私が話しかけると色々領地のことや食べ物風習などの話をしてくれた


 帰りの馬車の中で

「領民の皆さんも優しいですね 私ここが好きになりました」


 ユリウスは相変わらず無表情で外を見ているが指先が少し赤くなりぴくりと動いた


「セシル様ありがとうございます そう思っていただけて嬉しいです」彼の代弁をするかのようにスタンがそう言ってくれた


 でもね、スタン・・・ユリウス様の赤くなった指先だけで私は嬉しくなったのよとそっと心の中でそう思い、心の中があったかくなった


「ユリウス様、本当にセシル様 2日めとは思えないほどなじんでいますね 本当に素敵な方がきてくださってよかった

 ユリウス様のことも初めて会った時から他の方のように構えてみることもしないし・・本当によかったいい人が来てくれて」

 と明日の荷物の支度をしながらユリウスに声をかけた


「はじめてじゃない・・・・」


「え?」


「いやなんでもない」とユリウスは部屋の窓から外を見ていた




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