第2話 銀狼様との出会いは衝撃的
「さあ、この森を抜けるともうすぐに辺境伯様の城が見えますよ」
と御者が私に声をかけてくれた
朝早くに宿屋を出て渓谷を通りいくつかの村を通り大きな森に入った薄暗い森は昼間でも暗く少し怖かった 木々の間から漏れる日の光が少し緋色になってきた
日が暮れる前に城に着きそうかな
「お嬢様もう少しですよ・・」
と使者様が言いかけた途端何かが馬車にぶつかり馬車が飛ばされた
飛ばされた拍子に馬車が転倒した
「お嬢様大丈夫ですか?」
使者様が苦しそうにそれでも私の心配をしてくれた
「ええ、大丈夫です それより使者様腕から血が!」
そう言って私は使っていない綺麗なハンカチを差し出した
「使者様 出血箇所を心臓より高く上げてこれで出血箇所を抑えてこのまま安静にしていてください」
そう言って私は御者さんが気になり念の為、荷物から新しいドレスを持って外に出た
外には御者さんが頭から血を流して倒れていた
「大丈夫ですか」
「ああ・・・お嬢さ・・・ 」
「大丈夫ですよ 気をしっかりしてください」
そう言って私はドレスを破り彼の頭を上げて出血箇所を押さえた
「しばらく我慢してください」
と彼の頭を押さえていると私たちの上から大きな影が覆い被さった
大きな熊? というより熊の化け物が涎を垂らしながら見つめてうなり声をあげている
人間本当に恐怖を感じたときにはこえがでないものである
助けを求める声も出ない 手が震えて力が抜けそうである
でも止血するこの手手を離すわけにはいけない
と思った瞬間私の前に銀色に光るものがスッと出てきた
スパーンという音と共に熊の化け物も声を上げる暇もなく倒れていた
銀色の髪のその人は私の方を見ながら
「大丈夫か」と一言だけ言って去っていた
「は・・・・・はい」彼の去り行く姿を見ながら小さな声で返事をするのが精一杯だった
すぐに騎士団と思われる人が沢山やってきて私たちを城まで運んでくれた
私は自分の部屋と思われる部屋に運ばれて手当てされたのだが、
ショックと疲れのせいか意識が朦朧としていたせいなのか
その時のことはうっすらとしかわかっていない
ただ頭の上で男の人の声がいくつか聞こえてきてその中に優しそうなお母さんのような女性の声が聞こえていた
目がはっきりと見えるようになると横に優しそうな年配も女性がいた
「あら、お目覚めになられました ご気分はいかがですか」
「あの・・・・私・・・・ 」
この人があの優しい声の
「ああ、無理なさらないで しばらく様子を見てスープだけでも召し上がりますか」
「はい、ありがとうございます」
「私に敬語はよろしいですよ セシル様
私はサマンサここの侍女長です.
もう少し休んでいても大丈夫ですよ
旦那様には私からセシル様が気がつかれたことお伝えしておきますね」
そう言ってサマンサはそっと部屋を出た
もしかしてあの銀色の髪の男の人がユリウス様なのかしら
確かに無表情だったわ・・・でも「大丈夫か」って聞いていたわよね・・・
悪い人ではなさそうね・・・・
ふーっ・・・・ん・・・・確かにすごいイケメンだったわ・・・
なんだかこの5日間の出来事が滅多にないことばかりで驚きの連続だわ・・・
のどかな田舎町でずっといたせいかしら・・・いやでもここも辺境のはずよね でもあんな大きな熊がいるなんてあの森よっぽどいい食料が沢山あるのかしら・・・
なんてことをぶつぶつ独り言を言っていたら部屋がノックされ男の人が二人入ってきた
一人はあのイケメン・・・ユリウス様
するともう一人の男性が
「セシル様、こちらは我が主人ユリウス・ザンダー様
私は主人の専属侍従のスタンでございます よろしくお願いします」
「初めましてセシル・ゴールドウィンでございます このような姿で申し訳ございません」
とベッドから降りようとするが慌ててスタンが止めにきた
「セシル様無理しないで下さい 私たちが母に叱られます
母というのは侍女長のサマンサでございます 父が執事長のトーマスでございます
後ほどご挨拶させていただきます」
とにこにことスタンが自己紹介をしてくれる中 、やはりユリウス様は無表情で立っていた
「食事はできるのか」
「はい、少しお腹も空いてまいりました」
「では、今夜はここで食べるが良い 明日の朝食は体調が良ければ一緒にするがいい」
そう言ってユリウスは出て行った
無表情だけど話はするんだ・・・と思っていたら
「セシル様のこと気に入られたみたいですね あんなに女性に話しかけられるのは初めて見ました」
「気を使わせてしまったでしょうか」と私が笑うと
「そんなことはないですよ 長い目で・・・・見てやってください」
とスタンはまるでユリウスの優しい兄のように話した
使用人にこんなに慕われてるなんていい人なんじゃない
と思っていたら
「ああ、セシル様あの森は確かにいい食料が沢山ありますよ」
と笑いながらスタンは部屋を後にした
いやだ、私そんなに大きな声で独り言言ってたのかしら・・・
というかあの人たちどこから聞いていたのかしら
と恥ずかしくなってお布団を被った
その後、サマンサが持ってきたスープとパンを食べ、サマンサの話から使者様と御者さんの無事も確認ができてホッとした
明日は、両親と兄に手紙を書こう 大丈夫ということとユリウス様が噂ほど怖そうじゃないということ・・・クマの話はやめておこうそんなことを考えながら眠りについた
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