第65話 Dancing in the library
研究室に入り半年が、過ぎた古代遺跡の少しでも手がかりを求めるがなかなか辿りつかない
「ふぅ〜!」と眼鏡を外し一息つく
「おっ、リルお疲れ様、食事に行かないか」
ユウキとティムが声をかけてくれた
「ああ、行くよ」と2人とともに食堂に向かう
「リル、その眼鏡って度が入ってないんだろう」
「ああ、図書館で調べ物していたらやたら女生徒が声かけてくるから困っていたらティムが眼鏡かければいいぞって教えてくれてな」
「眼鏡かけたら地味になるかと思ったんだが・・・・・・」
「でも声かけてこなくなったぞ、ありがとうなティム」
それは、より一層かっこよくなって近寄りがたくなっただけで実はリルのファンが眼鏡効果で倍増していることをティムとユウキはリルに言えなかった
「大体、俺みたいな眼鏡って言ったつもりなのに、銀縁の眼鏡チェーン付きってのは反則だよな」
とティムはポツリと独り言を言った
「ん?なんか言ったか?」
「いや〜、別に〜!」
「今日はやけにザワザワしてみんな忙しそうだな」
「リル今日は舞踏会の日じゃないか」
「ああ、 そうか舞踏会か」あの舞踏会の日から1年か
「リルは参加しないのか、舞踏会」
「俺はもう学生じゃないしな まだ仕事残ってるし舞踏会はもういいよ」
「残念だな 伝説のカップルはもう見れないのか?」
「なんだ?それ」思わず笑ってしまった
「お前とグライシス嬢だよ
去年の舞踏会の後、生徒だけじゃなくてあらゆる所で、美しすぎる伝説のカップルって言われてたんだぞ」
「なんか、めちゃくちゃだな・・・・ハハハ
もう、舞踏会に出ることなんてないよ
研究で、クタクタにくたびれている俺見て踊りたいなんていう人がいると思うのか」
「・・・・・・・・・」
こいつは本当に自分をわかってないな…… と思う2人
「あ〜!リル俺たちはそんな残念なお前が大好きだよ」
2人がそう言いながら肩を組んでくる。
「なんだよ!残念って! 」と3人で笑いながら食堂へ向かう。
食事をしてまた研究室に戻りまた調べ物に夢中になっていたら
気がつくともう部屋に灯りが灯る時間になっていた
「あっ、これは図書館でないと調べられないな」
周りを見渡すと誰もいない
もうこんな時間か、そりゃ誰もいないはずだ
ランプに灯りを灯し部屋を出て図書館へと向かう
誰もいない静かな図書館への渡り廊下を渡っていると、大ホールからは灯りが輝き音楽がもれ聞こえてくる
賑やかな大ホールとは裏腹に図書館は時が止まったような静けさだった
「ふっ、流石にこんな時間か・・・・
しかも舞踏会の日に図書館になんてくるやつは俺だけか」
薄暗い図書館に灯りを持ちながら入る
楕円のテーブルに誰かいる? 寝てる?倒れているのか?
「おい!大丈夫か? 」と肩に手をかけて声をかける
「うう〜ん」と起きてきたのはハイネだった
「グライシス嬢、寝てたのか」思わずため息が出た
「申し訳ございません
調べ物をしていたら眠ってしまったみたいで」
「こんなところで、寝ていたら風邪をひくぞ
ほらこんなに体が冷えて」
思わず自分の着ていたローブを彼女に巻き付けるように着せる
「あ、ジーザメリウス様大丈夫です あなたが風邪を・・・・・・」
「大丈夫だ! 」
つい、キツく言ってしまい沈黙になる
・・・・・・・・
沈黙を破ったのはリルだった
「グライシス嬢、1年前のことをお詫びしたい
こんな謝罪は身勝手だとわかっているんだ
でも・・・・・・本当にすまなかった
1年前君に酷いことを言った
傷つけた言葉は取り戻せない
君を傷つけたことも取り返しがつかない」
「・・・・・・・」
「こんな謝罪も自分勝手な事だったね
すまなかった
私はもう行くよ・・・ 君も早く帰るんだ」
「ジーザメリウス様!
私、確かにあの時、確かにすごく…… すごく
でも、もういいんです 本当に大丈夫です
あの日の言葉を詫びるとおっしゃるなら、もうずっと前から許しています・・・・わかっています」
少し息を飲み、決心したようにハイネが言葉を出す
「ジーザメリウス様、よろしければもう一度あの日のように踊っていただけますか」
「グライシス嬢」
ハイネが潤んだ瞳で微笑みながら見つめてくる
そんなハイネの瞳を見つめ、リルが手を差し出した
「グライシス嬢、私と踊っていただけますか」
「喜んで」
差し出した手にそっと置かれた手はあの日と同じように緊張し手が震えている
ネクタイは緩みシャツの袖は捲ったまま
ハイネは俺の長いローブをドレスのように揺らしながら……
あの日の2人とはえらく違う
大ホールから漏れ聞こえてくる音楽に乗せ、薄暗い図書館の中で、2人だけのダンスを踊る
でもあの時よりゆっくり優しく、掠れた音楽と一緒に時間が流れる
音楽が終わるとともに甘い時間が終わりハイネと見つめ合った瞬間
小さい何かが俺の顔をバシバシと攻撃してくる
「うわ!なんだ?虫か? 」
と手で振り解こうとしても攻撃をやめない
むんずとそいつを捕まえた
「ハイネが!愛し子が許しても俺はお前を許さないからな!!」
「妖精?」緑色の羽を持った小さな妖精が俺の手の中でぷんぷん怒っている。
緑の妖精なのか?では、ハイネが緑の愛し子?
横ではハイネが困った顔をして立っていた
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