第64話  朝靄の中での再会

 13時(19時30分)エリアの中心にある噴水広場に行くとテーブルや椅子がたくさん並べてあった


「あれ?今日はお祭りもあるんですか?」


「何言ってるんですか リル様の歓迎会ですよ 

 参加人数多すぎて外ですることになりました」


「ええ?そうなんですか」


 見渡すと既に酒を組みわしている人もいる

 これは俺にかこつけて飲みたいやつも結構いるな

 でもなんにしろ歓迎してくれると言うのは、嬉しいもんだ


 俺が席に座ると1番に明日から一緒に働く魔法研究所の人たちが挨拶にきてくれた


「初めまして、ティム・ユージンです」

 巻き毛の金髪のそばかす顔で眼鏡をかけた優しい笑顔の同じ年くらいの男性だ


「こんばんはユウキ・サータスです」

 少し落ち着いた感じの薄いパープルのロングヘアの男性だ


「初めまして、リル・ジーザメリウスです

 若輩者なので色々教えていただければ助かります」そう言って握手をした


 彼らと魔法の話や取り止めのない話をして盛り上がった


「リル様!」マリアさんとジャックさんが仕事終わりに駆けつけてくれた。


「マリアさん、ジャックさん これからよろしくお願いいたします」


「リル様、あの中央カウンターでのコンサートの後、私リル様のコンサート開こう大ホール抑えていたんですよ!!なのに急にリル様いなくなるから」


「え!!」思わず、俺もその周りにいるみんなも驚いた


「マリア、それはダメだよ。大体リル様の許可ももらわずに、暴走しすぎだよ」

 とマリアさんはジャックさんに優しく叱られた


「ごめんなさい、リル様」


 ジャックさんに叱られてしょんぼりしているマリアさん

 クールな女性に見えていたが、今回のような行動力といい、

 こうしてジャックさんに叱られてしょんぼりしている姿を見ていると、人は見た目で判断できないものだ


「私がここを出ていく時、ジャックさんしかいなかったのできちんとご挨拶していなかった私が悪かったのですから」


「リル様……」


「その代わり今日は、歌いますよ」とアコースティックギターを取り出した


「キャー!!」 と周りにいた女性職員たちが声を出した

 噴水の前のベンチに腰かけ歌い出す

 先程まで、酒を飲んで騒いでいた男たちも話をやめて聞き入ってくれる

 歌を歌うのはやはり大好きだ 

 自分の歌が誰かの心に響いてくれている瞬間、誰かが笑顔になる瞬間が大好きだ

 そして何より自分自身が癒されている


 その日は求められるまま、何曲も歌い続けながら夜が更けていった



 朝になり、1番鳥が泣く前に起き、寮の周りをランニングしストレッチをし素振りをする、学園でいるときのルーティンだ

 寮の周りを走りちょうどジーヤメリ寮の前に差し掛かった時、朝靄の中に人影が見えた


 こんな朝早くに……

 朝靄のが切れた隙間からこちらに振り返ったのはハイネだった……


「やあ、おはよう グライシス嬢早いんだな」

 心の動揺を隠し普通に朝の挨拶をした


「おはようございます

 ジーザメリウス様 所用がありこの時間に領地から帰って参りました」

 少し会わなかっただけなのに大人っぽくなっている気がした


「ああ、そうか では」と走り出そうとした時


「ジーザメリウス様、お身体のご加減は?」


「あ、いやすこぶる元気だ」


「よかったです、お止めしてしまいまして申し訳ございません」


 ほっとした顔をした 彼女が言う

 噂を耳にして心配していたのだろうか


「ありがとう、グライシス嬢もその…… 色々大変だったそうだな

 君は、君のご家族はもう大丈夫なのか」


「ご心配いただきありがとうございます

 家族も私も大丈夫です…… 本当にありがとうございます 

 あの……それでジーザメリウス様はどうしてここにいらっしゃっているのですか」

 彼女は、言葉を探すように尋ねてくる


「ああ、しばらく魔法研究所でお世話になるんだ

 また・・・・・ああ、すまない時間がない 

 失礼する では、また」とまた走り去るリル


 でもリルは知らなかった

 走り去るリルの背中を見送るハイネのポケットの中にはリルが無くしたと思っていた懐中時計が入っていたことを・・・・

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