第48話 魔獣の山
朝日が昇るとともに、ドワーフの里を出発する
昨晩の宴にもかかわらずみんなが里の入り口まで見送りにきてくれていた
「お世話になりました
またきます どうか皆さんお元気で」
「リル、気をつけていくんじゃよ
それとその剣だがお前の成長と共に変化するから楽しみにしておけ」
「変化? 」
そういうとクローネさんはウインクをして親指を大きく突き出した
「わかりました、楽しみにしておきます」
そう言ってドワーフ達の別れをつげ、龍の渓谷へと出発した
「渓谷にたどり着く前に、あいつと一戦交えないといけないな
きっと…… 」
主のサラマンダー絶対に現れる
予感ではない確信だ
今度は絶対にやられない
木々が風に揺れる音と、鳥の囀りだけが静かな森に響き渡る
周りを伺いながら歩くと森の出口が見えた
途端に、目の前に大きな青空が広がり小高い山が見える
空にヘイロンが待ち構えたように待っていた
「さあ、いくぞ、ここからだ」
聳り立つ岩峰、渓谷はこの向こうの岩場が多い山だ
山登りというよりロッククライミングのような箇所もある
俺たちが必死で登っているとヘイロンが横まで寄ってきて
「なあなあ、やっぱり俺の背中に乗せてやるから飛んでいこうぜ」
とチャチャを入れてくる
「だから、何度も言ってるだろ
それじゃあ扉が見つからない気がするんだ
一歩ずつ確認してこそ見つかる気がするんだ」
「ちぇ!リルは頑固だな」
「じゃあ、崖から落ちたらヘイロン助けてくれよ
俺はもう崖から落ちるのは懲り懲りだからな」
(本当に、もう転生はごめんだぜ)
そんなことを言ってると小石が顔を掠めた
「ブルー! ホクト! 気をつけろ! 」
上から次々と大きな岩が落ちてきた
誰かが落としてきやがる
次々と落ちてくる岩をステップにして飛び上がっていく
「ヴェーヤヴィポリス」
呪文を唱え、風の渦を作り上まで俺たちの体を運んだ
上まで上がると、驚いた様子のゴブリンたちが襲いかかってきた
「チッ!一休みもさせてくれないんだな」
そう言いながらミスリルの剣を振る
シュッパと一振りでゴブリンの巨体が真っ二つになっていく
柄が手にしっくりくる
やはり、ドワーフが作った剣すごいな…
ブルーは風の剣を起こしホクトは炎を纏いながらゴブリンを倒していき、ヘイロンは雷を次々とゴブリンを狙って落として行く
そこに一際大きなゴブリンが現れた
「ゴブリンのボスか・・・・
ふっ、本当にゲームでいう中ボスってやつかな ん? 小ボスか」
と呟いていたらゴブリンボスが全力で俺に向かってきた
刹那、「ヴオルヴィオローデン(魔弾)」
と言葉が勝手に口に出ながら父上のように指先をパチンと鳴らしゴブリンに向けた
弾丸のような魔力がゴブリンの心臓を貫きゴブリンが粉々になり消し去ってしまった
「一体、今のはなんだったんだ」
自分自身でもわからない状態に呆然とした。
ゴブリン達の亡骸を荼毘に付す
魔獣魔物といえどやはり命を奪うのは本当は嫌なものだ
重たい気持ちを抱えたまま、また歩き出す
その後も次々と絶え間なく魔獣が襲ってくる
いつしか先程のセンチメンタルな気持ちなどどこかに消えてしまった
そして淡々と魔獣を滅してしまうようになっていた
山の頂上にかかる頃には夕陽がもう落ち始めている
夕陽がこれから始まることを伝えるように赤く・・赤く・・・
紅色に空を染めていた
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