第7話 目覚め おもいがけない出発
長い、長い夢をみていたような気がする
鳥のさえずりで目が覚めた
どんな夢かわからないが、涙を流していたようだ
目が覚めると体の感覚が少しずつ戻ってくる
体中が、バキバキに痛い 今まで味わった事のない痛さ
ドームで3daysライブの後でもこんなに痛い思いをした事がない
両手が何かで押さえつけられているようで上がらない
指先を少し動かしてみる 自分の手に重なっているものがわかる
ああ… 本当にこの人達は…… と胸が熱くなってまた泣きそうになった
「ち_ちちうえ、は_ うえ 」声をだして呼ぼうとするが、
声にならない。
目覚めた俺に気がついた俺を父がギュッと抱きしめた
抱きしめた手が震えている
この人はどうしてこんな赤の他人の俺を、大切にしてくれるのだろう
抱きしめられ、痛みとともにそれ以上に愛情が心にも体にも染み渡る
「3日間も目を覚まさなかったのですよ」
赤い目をした母も手を握ったまま俺の手を離さない
マーサが、「ゆっくりお飲みくださいね」と白湯を飲ませてくれた
コクンと温かい白湯が、カラダに入っていくのを感じる
飲み終わる頃、バタバタと人が入ってきた
カリアスとグリー教授だ
父が母に「お前も一度ゆっくり休め マーサ 部屋までシルフィを… 」
促す
俺のベッドを囲むように、父上、カリアス、そしてグリー教授がすぐ横に座る
マシロは、俺の上に座り心配そうにこちらをみている
グリー教授が、俺のへそあたりに手をかざす
へそを中心に体が熱くなっていく
グリー教授の魔力が流れてくるのがわかる
自分の中の何かと絡み合い隙間を埋めていくような感覚
グリー教授は、「手当」が終わると丁寧に話をしてくれた
「魔力を持つものは体に核があり、核から細胞に流れ身体を巡回している
巡回している魔力を集中させ魔法を発動する事ができる
その方法は、人それぞれ その人の持つ力、魔力の種類 、知識、
条件などによって違う
リルは、現状今ある核と心体より、魔力が多すぎる
15歳まで架けられた魔法の枷があの時、お前の魔力に耐えられなくなり
壊れてしまい暴走してしまったのだ」
「あの…… 街や街の人達 あの女の子は、大丈夫でしたか? 」
気になっていた事を恐る恐る聞く
「ああ。記憶は、消させてもらったし、街も元通りにしたから 大丈夫 気にしないで 」
と、軽〜く、笑顔でグリー教授は何事も無いように話す。
あの街全体に魔法かけるなんてこの人一体 なにもの なんだ
と思わず見つめてしまう
俺の考えを察するようにニコニコと笑ってる
父上がスっと コレを着けろと 深い蒼い色指輪と黒いピアスを渡した。
指環を右手の中指に着けると、
シュンと自分の指にフィットするサイズになった
「魔力を抑制する指環と髪色と瞳の色の変身が解けないピアスだ
いつも身につけておくように
来年の秋には、お前もアカデミーに入学する、そうすると、寮生活になる
この1年で魔力を上手く取り入れられるよう鍛え直すからそのつもりで」
これまでの優しい父ではなく、強く厳しい瞳で見つめられた
その瞳の父に応えられるよう「がんばります」
と精一杯の返事をかえした
「もう、体大丈夫でしょ この前出した宿題もちゃんとしておいてね
明日の授業までね。 じゃあまたね。」
と、グリー教授は、ニコニコと手をヒラヒラさせながら部屋をでた
(ううう… でも、そういえばバキバキしてた体痛くないや )
「風呂に入って食事してからにしろ」と安心したように言うと
父が腰をあげる
カリアスは、「剣の練習は、明日からな」とニッコリ笑って部屋をでる
「うん!ヨシおきるか!お前もありがとうな、
助けてくれて、本当にありがとう」
俺の上にいるマシロをポンポンとしてお礼を言ってから、
ベッドのサイドテーブルに手を伸ばす
「マーサ〜!」と呼び鈴をチリンチリンと鳴らす
あの魔力暴走から2週間毎日剣の練習と魔法の勉強と練習で忙しい
ジーザメリウス領も本格的な夏 !
それでも暑さに関係なく厳しい演習は、つづく・・・・
いくら広い演習場でもガタイのいい騎士ばかり沢山演習するから熱気でムンムン
毎日数人の騎士がバタバタ倒れる
これって熱中症だよな〜 というわけで、経口補水液と塩飴を作ってみんなに配ることにした
騎士だけじゃなくて使用人のみんなにもね
「砂糖は、ともかく塩いれるんですか?」
料理場で一緒に手伝ってくれている若い料理人たちがツッコミをいれてくる
「塩が、大事なんだよね〜」とかいいながら みんなでワイワイいいながら作っていくのは、中々楽しい
港が近くにあるので塩があるのは わかるが意外だったのは、レモンが手に入ること
レモンを絞って入れると美味しくなって効果もあがるんだよねとテンションもちょっと上がった
「出来れば、大変かもしれないけど、
夏の間毎日作ってほしいんだけど特に騎士や、
外で作業する使用人達に配れるように…
それと、ここの人達も火を扱うからさ、暑いでしょ
だから、調理場で作業する人達にもね。」
と料理長にお願いするとふたつ返事で承諾してくれた、料理人達の事も気遣ったのが嬉しかったらしい
経口補水液の評判は、中々いい
侍女さん達は、塩飴の方がポケットに忍ばせてこっそりモグモグできるのがいいらしい
父上にも、持って行こうと、書斎にくるとバタバタと忙しそうだ、扉をノックし、声をかける
「失礼します」と入っていく
「ああ、丁度よかった。今から北の山地に行くからお前も準備しろ。ティコ、初めての遠征だから荷造り手伝ってやってくれ 」
「あ! ティコ復帰したんだ! 」
ティコとシファーは、あの魔力暴走事件の時、俺の護衛が勤まっていなかったと理由で謹慎処分になっていた。
俺が勝手に暴走していたから、ふたりには責任ないのに…と言ってもそうは、いかなかった……… ふたりは、カリアスからかなりお叱りをうけたらしい
「今日からシファーも復帰してるんだよ リルは、もう体調も大丈夫? 」
「もう、全然平気! ところで遠征って?」
「北側の山地に、魔獣が暴れているって 報告があってね、ほら、ここ! 」
ティコは、領地の地図をひろげ北側の山地の奥側 を指さす
「ココにうちの砦があって、その少し北側に大きな湖が ある 、湖から森をぬけたところに大きな鍾乳洞があるんだけど、この付近で魔獣が最近暴れていると、砦の見張り番から 連絡があったんだ、あと半時ほどで出発するから早急に準備しなきゃ! 」
ティコは、俺の手をひいてバタバタと俺の部屋に向かう
初めての遠征 魔獣討伐! 足手まといにならないようにしないと、思いがけない 出発に 緊張と不安でいっぱいになった
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