第6話 出逢いと魔力の暴走
「おはようございます、父上、母上」
「おはよう」
「おはようございます、リル 昨晩は、よく眠れましたか? 」
そう、父上ことコントレール・ジーザメリウス辺境伯は、1年前 シルフィ・グレイアム公爵令嬢と結婚した
つまり、俺に母上ができた そして、母上のお腹には新しい生命が宿っている
俺には、妹か弟が出来るのだ
「はい、よく眠れました。母上こそ体調は、いかかでしょうか そろそろ赤ちゃんに会える時期ですよね」
「ありがとう、リル おかげで私も、快適に過ごさせていただいておりますよ」
母上は、ミルクティーのような髪色で薄いブラウンの瞳、美しい顔立ちの上にとても賢く父上を支えながら領地の仕事等も切り盛りしている。俺の事もとても大切にしてくれている。父上も、母上も政略結婚と言われながらもとても幸せそうだ。
「父上、本日街に出かけたいのですが よろしいでしょうか? 」
「買い物か? 」
「いえ、実は 父上に頂いた懐中時計の調子が悪く時計屋で見てもらおうかと思っております」
「わかった、では、ティコとシファーを護衛として連れていけ。私から話しておく」
「え? ひとりで大丈夫ですよ。そんな大袈裟な 」
「何を言ってる! 護衛も付けず街に出かけるなんて 」
父上は、過保護なんだから… と、 聞こえないような独り言を呟いたはずなのに…
「なにが、過保護だ! 当たり前だ! 」と、叱られた
本当にこの人 地獄耳だ……
母上は、そんなふたりのやりとりを見てニコニコしている
結局、ティコとシファーを伴い街にでかけた。ジーザメリウス邸から馬車で20 分くらいの場所にある「メリル」という街は、港街でジーザメリウスの領地の中 でも大きな街だ。港街だけあり、他国からの物流の窓口でもあり人も物品の流れも激しい。その街の中心にある噴水広場すぐにある大きな貴金属店が今日の目的地だ
ドアマンが 扉を開け、入っていくと細身のスラリとした店主が出迎えた
「いらっしゃいませ、リル様 本日は、いかがなさいましたか? 」
「実は、この懐中時計の調子が悪くて見ていただけますか 」
「かしこまりました。では、少しお預かりしてよろしいでしょうか?」
店主は、懐中時計を手に取り、少し懐中時計をあちこち確認しながら
「申し訳ございませんが、半日程お時間頂いてよろしいでしょうか? よろしけれ ば御屋敷にお届けする事もできますが 」
半日か… 今からだと夕方 か…
「いえ、まだ他にも街を見て回りたいのでまた伺います。それと、懐中時計の紐も、傷んできたので変えてほしいので、 幾つか紐をみせてもらえますか 」
「かしこまりました。 では、紐は、どちらにいたしましょうか? 」と懐中時計の紐を幾つもだしてくれた。黒・ワインレッド・緑 ... 色も細工したものなど豊富にある。その中でも、深い蒼い色に銀色糸が刺している紐が目に入ってきた
「そちらの紐でしたら、リル様の瞳と髪色と御一緒でございますね」
本当の髪色と瞳の色は、黒い髪に黒い瞳なんだけどな。 どうも、この銀色の髪色と深い蒼い瞳に思いのほか、すっかり慣れてしまい自分の色になってしまったようだ。
「この紐にしてください」と深い蒼い色の紐を選び店をあとにした
ふと … いつか、この銀色の髪と深い蒼い瞳と別れる日が来るんだ。 幸せなこの場所から旅立たないといけない日が来るんだ。そんな思いが胸を溢れた…
正直言って、本当の父と母の記憶がなく、いつしかコントレール・ジーザメリウス
という人を実の父親のように思っていた
「リル、どうしたの? 顔こわいよ 」そう言いながら、ティコが顔を心配そうに覗きこんできた
「いや?何だか腹減ったなぁと思って! ティコ シファー なんか食べようよ」
そう言いながらティコとシファーの手を引っ張った
うん、今は、考えるのやめよう! そう思いながら2人の手を引きスイーツ店へと向かった
ティコとシファーも実は甘党
最近評判のスイーツ店に誘うと ふたりともニコニコしながら賛成してくれた
貴金属店をでると、初夏の風が頬を撫で、髪を遊ぶように爽やかに流れた
風に誘われるように港から 海の香りがする
噴水広場を中心に、港に行く道 貴族街 平民の住宅地
にと四方に大通りがあり、大通りには魔石燈が規則正しく設置されている
平民の住宅地へと続く大通りには、幾つかの小さな路地があり
港に続く大通りには、荷車や馬車が行き来している
そんな賑やかに 人が行き交う中
3人でウキウキしながらスイーツ店へと向かう
行く途中、俺達3人に気が付いた街の人が声かけてくれる
ファンサよろしく ニッコリ笑顔で手をふる
当たり前だが 「投げキッスして! 」「 指ハートして! 」「バキュンして!」
とかいうのは無い
ちょっとさみしいね(笑)
スイーツ店を入ろうとすると
「きゃー! ! 」と 女性の叫びがし、振り返ると辺りが騒然としている
噴水広場の向こう側で女性がふたり 作業服風の男達3人に追いかけられている
現状を認識するとすぐに動いたのは、シファーだった
ひとりの男を取り押さえた
俺とティコは、残りの男達と女性を追いかけた
このまま行くと路地の突き当たり…………
ティコとアイコンタクトを取り、俺は、抜け道の方に向かう
突き当たりの上側にいく道に抜けて路地の突き当たりの上まで来たが、
女の子が既に追い詰められていた
下まで2mくらい アイドル時代ステージ上で飛び降りたりしていたから
特に怖くないけど、飛び降りたあとに
あ!ここクッション無かったっけ? とか気がついた
とりあえず無事に女の子と男が向かいあう間に 飛び降りた
足めっちゃ痺れてるけど…………
男達は、無言で剣をふりまわす。
剣を抜き剣を交え、相手が大きく剣を振った瞬間、
ステップを使って反対側に移動し、相手の剣を弾き足元をひっかける
ひっくり返った男の脇腹にグーパンいれた唸りながら動がなくなった
(う〜ん、こんな勝ち方師匠にめちゃくちゃ怒られるパターンだな)
師匠がこの場にいなくて良かった
「ふーっ! 大丈夫? 」
座り込んだ女の子に手を伸ばした
でも女の子は、顔をひきつらせて俺の後ろを指さす先には、
さっき倒れた男が剣を振りかざしていた
うわっ! やられる! こんなんだから詰めが甘いって怒られるんだ…………
何も持っていない両手を思わず相手に向かって思い切り突き出してしまった
すると俺の両手から光の渦があふれでてきた
強い光の渦に巻き込まれ男の姿が消えてしまった
溢れ出す光の渦は、それでも止まらない
うわっ、止まらない、止まらない、光にカラダごと引っ張られる感覚がする
光の渦は、空に向かって光の柱のようになり、
しばらくすると光が俺に勢いよく落ちてくる…………
その瞬間ポケットからマシロが飛び出しめちゃくちゃ大きくなった。
身体中の針を避雷針のように立てて光を吸い込んでいく
全ての光をマシロが吸い込んだ瞬間、意識が少しずつ遠のく
ああ、あの子大丈夫かな トラウマにならないかな
うわ、俺めっちゃカッコ悪いなぁ
そんな事思いながら意識を手放した
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