第14話【全一】
「さーて、アップ始めるぞー」
「新、シュート練習させてくれ」
「そう言うと思ってたよ、晴也。俺がパス出すからダイレクトかボレーで撃ってくれ」
「わかった!」
その時、俺らの元に一球のボールが転がってくる。
「すみませーん」
対戦校のボールのようだ、選手が駆け寄ってきた。
「すいません、ちょっと足がブレちゃって‥‥あっ」
その選手は俺の顔を見て表情を変えた。
「もしかして、【パーシヴァル】さんに【アーサー】さんですか⁉」
「あ、そう呼ばれてるみたいだね‥‥うん」
「感激だなぁ、小学全一の人が二人もいるチームとの練習試合だなんて!」
そう、俺と晴也が通っていた小学校は、全国大会優勝を果たしている。
「今日はよろしくお願いします!」
「おう」
「よろしくな!」
丁度その頃白雪が陸競に到着した。
「ここにしましょうか‥‥」
白雪は観客席に座り、新はどこにいるのだろうと目を凝らす。
すると、四人の女子が近付いてきた。
「あ、あの‥‥白雪さん‥‥?」
「はい?」
「ほ、本物‥‥」
「私は白雪六花ですが」
何なのだろう、と白雪が疑問に思っていると、
「きょ、今日はどうしてここに‥‥?」
「サッカーに興味がありまして」
「じゃ、じゃあ‥‥誰かを応援しに来た、とかはないんですよね‥‥?」
「いえ、それもあります」
「そ、そんな‥‥」
「それに、このお弁当も届けないといけませんので」
「そ、それって‥‥手作り‥‥なんですか?」
「ええ、もちろんです」
「いったい誰に‥‥?」
「……それは言えません。相手にも迷惑がかかるので」
「そ、そうですか‥‥」
白雪の目は新を捉えた。
◇◇◇
「さて、そろそろ試合だ、準備しろー」
監督の指示に部全員が動き出す。
「音花、高橋、お前らはスタメンだ。筋肉ほぐしてるな?」
「はい!」
「大丈夫です」
「よし、じゃあ行くぞ!」
『はい!』
「これより、練習試合を始めます。気をつけ、礼」
『おねがいします!』
コイントスにより俺達の先攻。
ピーッ、キックオフ。
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