第4話

それからかなりの距離を歩いた。

息は絶え絶えになり、足取りはおぼつかないが、ようやく山の麓へと至ることができた。

目の前の山には砂埃が舞っていないうえ、木がほとんど残っておらず、かなり先まで見通すことができた。

それが少し不気味であったが、そんなことを考える余裕も残っていない、あたりはもうかなり暗くなっていて、先ほどまで時々会話していた彼女の姿も見えづらくなっていた。

息が上がっている音がしないので彼女を把握するには、地面の擦れる音を頼りにするしかなかった。

「俺はこのまま進むつもりですが、どうしますか?」

こんな禿山では野生動物の心配がないし、一刻でも早く辿り着き、ここ数週間の苦労を報いたい一心でそう質問した。

「私もそれで構いません。」

やはり彼女は無機質に答えた。

その様子からは疲れが一切感じられない。

出発前の考えが頭をめぐる。

本当に彼女は……

「では行きましょう。」

そんな考えを振り切るように彼女に呼びかけた。

勾配の低い山道を進む。

水はもう最後の一滴。

喉は乾ききり、唾も出てこない。

足裏は血で汚れ、体も痩せ細ったけど、それでも速度は上がっていく。

花が咲き誇っている。

先ほど登ってきた太陽に照らされているその光景が自分を奮い立たせた。

その花畑に足を踏み込んだ途端、こうなった原因を思い出した。

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