第3話
そこに違和感を覚えながらも、この沈黙を破るため、彼女に問いかける。
「なぜこんなところに?」
同じ理由だろうと思っての質問だったが、これは彼女にとって難しいもののようであった。しばらくして、彼女が口を開く。
「わかりません。」
その答えに俺は疑問が浮かぶ。
このようなところにいて、わからないなんていうことがあるのだろうか。彷徨ってここまで来たのだろうか。それともここから離れられないのだろうか。
いくつもの疑問が浮かぶ中、そのうちの一つに気がかりができる。だけどそれはとても彼女に当てはまるようなものではない気がした。だってそれは俺がこの長い道のりを歩いてこなければならなかった理由であり、彼女から感じる雰囲気よりももっと……そこで俺はまたひとつ気がかりができた。彼女から雰囲気を感じ取れない。誰だったとしても少なからず感じるはずの雰囲気を微塵も感じないのだ。確かに疲れていて,脳が正常ではないのかもしれない。
だけどもし彼女が……
「あなたはどうしてここに?」
彼女の問いかけに思考が途切れる。
先ほどの考えに気を引かれながらも、それに答えた。
「あの先にあるはずの山を目指しているんです。」
そう口にすると、自分のするべきことを自覚しなおせ、立ち上がった。
そして彼女に聞く、
「あなたも一緒に行きませんか?」
彼女はしばらく固まり、その後小さく首肯した。
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