第2話

目を開くと、灰色の壁が見える。

所々ひび割れ、触るとすぐに壊れそうだ。

触ってみようと思い、一歩前に足を踏み出す。だけども前に進まない。前に出した足は見事に空を切った。

そこでやっと背中に固いものがあることに気づく。

どうやら俺は寝転がっていたようだ。

足に力を入れ立ち上がる。

硬い床で寝ていたせいか、もう体力が残っていないせいか、全身に痛みが走る。

最低限の動きで周りを見渡すと、1人の女性を見つけた。

こんなとこに人がいるのかと驚いたが、声は出ない。

自分と何か接点があるのかと記憶を辿ると、意識が途切れる前に最後に見つけた人だと気づく。

話しかけようとするが声が出ない。

なけなしの水を飲み,途切れそうな声で話しかけた。

「あの,助けていただき、ありがとございます。ゴホッ、あの,ここは?」

咳き込みながらもそう告げると、

彼女はこちらへ振り返り、

「あなたが倒れてから、かろうじて原型を保っているビルに連れてきました。」

そう無機質に告げた。

会話が終わり、沈黙が続く。

その間、彼女の瞳がまっすぐこちらを見つめている。見つめているように見えるのに、なぜかどこか違うところを見つめているように感じた。

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あいを知ったもの達よ、 甘栗むかせていただきました。 @kuri-manju3131

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