あいを知ったもの達よ、
甘栗むかせていただきました。
第1話
あたり一帯が荒廃した土地に1人の人影が映る。
砂埃が巻き起こり、粉砕されたであろう赤や青に塗装されたコンクリートが散らばっている。
元は柱であったであろう鉄鋼は折れ曲がり、全盛期はビル群で盛況していた頃の面影はもう残っていない。
川があったはずの場所は干上がっていて、一本の道のようになっていた。
全て過去の遺物となり、残るのは不毛の大地だけ。
そう感じながらも俺は重い足取りを必死に動かす。
もう数日は食べ物を口にしていない。
持っていた水分もあと数口でつきそうだった。
嫌味を吐く口も残っておらず、喉を乾かしながら進む。
目も霞み、舞った砂が眼球を直撃していた。
この喉の渇きも、お腹の減りも、この先にあるはずの水源につけば、なくなるはずだ。
そう信じていても、やはりもう心は折れかかっていた。
そんな折に、砂埃の奥に何かが見えた。
その何かに縋るように速度を上げる。
するとあちらもこっちに気づいたようで、こちらを振り返る。
ようやく見えたその姿は周りの風景とはお世辞にも似つかない、綺麗な女性だった。
あろうことか俺は彼女に一目惚れしてしまった。
しかし、急に速度を上げた影響か、全身に力が入らなくなり、そこで俺の意識は途切れた。
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