契約
数日が過ぎ、レオナルドはグールたちを倒しながら迷宮の奥深くへと足を進めていた。微細だが確実に成長しつつある自分の変化を感じながら、彼の心には希望と闘志が燃えていた。そんな時、ふと彼の目の前に、今までに見たことのない光景が広がった。
迷宮の壁が大きく崩れ、広間のように開けた空間が現れたのだ。壁や床には古びた彫刻や装飾が施され、不気味なほど静寂に包まれている。中心には奇妙な装置が鎮座しており、異様な光が微かに漂っていた。
「これは…何だ?」
不思議な引力に惹かれるように近づくと、そこに現れたのは一冊の古びた魔導書だった。カバーには見知らぬ文字が刻まれ、開いたページには複雑な魔法陣と共に、人間の姿に戻る方法について書かれているような記述が見える。だが、ただの魔導書ではなかった。触れた瞬間、レオナルドの意識の奥に何かが響き渡る。
「お前は…人間に戻りたいか?」
暗く冷たい声が、頭の中に直接響いた。レオナルドは驚いて辺りを見回したが、誰もいない。ただその声だけが彼を問い詰めてくる。どうやら、魔導書には何か強力な存在が封じ込められているらしい。
「人間に…戻りたい」レオナルドは静かに答えた。すると、再び声が響く。
「ならば、私と契約するがいい。お前に力を与えよう…ただし、その代償として、私の望むものを成し遂げてもらう」
契約。謎めいた存在の要求にレオナルドは躊躇した。だが、もしこれが人間に戻る唯一の手段であるならば、逃すべきではない。しかし、代償とは何なのか?その不安と共に、彼は強烈な誘惑に抗えなくなっていく。
「その代償とは…何だ?」と、彼は慎重に尋ねた。
「お前が望む形になったとき、我が意志に従い、己の肉体を操られることだ。だが今は心配するな。まずは力を与えよう…」
それを聞いた瞬間、レオナルドは意識がかすかに揺らぐのを感じた。だが、体中に燃えるような力がみなぎり、今までの成長の比ではない変化が彼の肉体を襲った。骨と腐肉がより強靭に、そして次第に生身の肉体を取り戻していく。彼の手や足は明らかに人間らしさを増し、力も格段に向上しているのが分かる。
その瞬間、彼の意識が再び戻り、目の前には新たに生まれ変わった自分が立っていた。だが、その力の代償は、いずれ訪れるはずの「契約」への不安を伴っていた。
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