君の名は「グール」
レオナルドはひたすら低級のアンデッドを倒し続ける日々を送っていた。経験値はごく僅かで、目に見える成長の実感は乏しかったが、彼には目的があった。迷宮の奥で待つデスナイトとの再戦、そのために強くなるという決意が、毎日の戦闘を支える力になっていた。そんなある日、迷宮の奥から響く異様な音が彼の耳に届いた。重厚な響きに、通常のモンスターの出す音とは明らかに違う異質な気配が漂っていた。
「これは…」
その音を追って歩を進めた先で、レオナルドは見慣れない異形のモンスターと遭遇した。それはスケルトンやゾンビとは異なり、圧倒的な存在感と禍々しい気配を纏った“グール”だった。腐敗した皮膚が張り付き、鋭い牙を剥き出しにしたその姿は、ただのアンデッドとは一線を画していた。体格も人間より大きく、その爪は鋭く研ぎ澄まされている。
「これなら…少しは成長の糧になるかもしれない」
レオナルドは剣を構え、慎重に距離を測った。グールは明らかにスケルトンやゾンビよりも強力だが、デスナイトほどの圧力はない。戦いの中でどれほどの経験値を得られるかは未知数だが、少なくともスケルトンを倒し続けるよりは成長につながるはずだった。
グールが猛然と爪を振り下ろしてきたのを、レオナルドは冷静に見極めて身を翻した。かつての騎士としての訓練が染み付いている彼には、これまで培ってきた回避の技術が自然と活きていた。すれ違いざまに剣を振るうと、グールの体に深い傷が刻まれる。しかし、相手も再生力があるらしく、その傷は見る見るうちに癒えていった。
「再生能力もあるのか…だが、それでも戦い続ければ、いつかは勝てる」
彼は戦いの中で慎重に自身の剣技を研ぎ澄ませていった。グールとの連戦で、肉体も徐々に進化していく感覚があった。自らの力が確かに高まっていることを感じる度に、レオナルドの胸には新たな希望が宿る。
数日の戦闘の末、ついにグールを仕留めた時、レオナルドは確かな成長を実感した。息を整え、己の手を見つめながら、その手が少しずつ人間らしさを取り戻していることに気づいたのだ。骨と腐肉が混ざり合っていた指先が、微かにだが、生きていた頃の姿を彷彿とさせる皮膚を取り戻しつつあった。
「まだ遠いが…これで一歩近づけた」
彼は自分が確実に進化し、かつての人間の姿へと戻りつつあることに喜びを感じながら、次なる敵を求めて迷宮を歩み続けた。
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