アンデッドの「格」
デスナイトと対峙し、レオナルドは自身がなぜこの戦いで踏みとどまれるのかを不思議に思っていた。圧倒的な存在感を放つ敵を前にしながらも、彼はただのアンデッドとは異なる何かが自分の内にあることを確信していた。
「俺は……なぜ戦えているんだ?」
レオナルドの中で湧き上がるのは、ただの生存本能ではない。それはかつて騎士として戦場を駆けた時の誇り、そして未だ果たせない帰還への強い意志だった。彼のように明確な意志と記憶を保ったまま蘇ったアンデッド、レヴナントは、迷宮を徘徊する無数の低級アンデッド──スケルトンやゾンビたちとは一線を画している。彼らがただの命令や欲望に従い無思考に動くのに対し、レヴナントは戦闘においても自らの技量と経験を活かすことができる存在である。
実際、レオナルドの攻撃には、経験に裏打ちされた正確な剣の運びがあった。スケルトンが無造作に剣を振り回すだけなのに対し、彼の一撃一撃は自分が受けた訓練と技術を反映していた。デスナイトとの戦いにおいても、単なる生き残りのためではなく、勝機を見出そうとする意志がその動きを支えていた。
「俺が他のアンデッドと違うのは、この意志のせいか……」
彼はデスナイトの一撃を避けながら、ふとそう思った。自分には、ただの亡者とは違い、未だ胸に灯る希望がある。自分がまだ「人」であると感じさせる何かが、この腐敗した体の奥底で脈打っている気がしてならなかった。何もかも諦めているわけではない──それこそが、他のアンデッドと決定的に異なる点だった。
さらに、レヴナントとしての強さも、他のアンデッドたちを明確に上回っていた。スケルトンのように簡単に破壊されるわけではなく、ある程度の意思と力を保ちながら再生することができる。また、ゾンビよりも遥かに洗練された動きを持ち、迷宮で出会う大半の敵には引けを取らない。だが、それでもデスナイトには及ばない。それは、彼がまだ成長を必要とする存在であることを痛感させた。
「俺がもっと強くなれば……デスナイトとも互角に渡り合えるのか」
その考えが、さらに彼の心を奮い立たせた。これまでの自分にはなかった野心が、暗闇の中で微かに火を灯し始める。レオナルドは、彼がいずれ人としての姿を取り戻すためにも、強く進化することを心に誓った。
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