初めての格上
迷宮の奥深くへと足を踏み入れるにつれて、レオナルドは自分と同じく死から蘇ったアンデッドたちに囲まれていった。己が「レヴナント」──復讐と未練に囚われた者が強い意志を持ったまま蘇る、特異なアンデッドであることも理解し始めていた。通常のアンデッドとは違い、記憶と目的を保ち続ける存在であるがゆえに、この迷宮で漂う他の者たちとは異質な存在であることが彼自身にもわかっていた。
体は死者らしく鈍重で、肌も所々腐敗している。だが彼の意識は確かであり、生前の記憶もまだ薄れていない──自分を待つ存在、帰るべき場所。それを心に留めるたび、胸の奥から強い執念が湧き上がり、絶えず戦いへと向かわせた。
さらに奥へと進んだ先で、彼は新たな敵の存在を感じ取った。それは「デスナイト」と呼ばれる、迷宮に挑んで果てた伝説の騎士がアンデッドとして復活したものだった。鋭い眼光に怨念が宿り、重厚な黒い鎧に身を包んだその姿は、ただの亡者とは一線を画していた。デスナイトはゆっくりと大剣を構え、冷たく鋭い殺気を放ちながらこちらを見据えていた。
刹那、レオナルドの本能が危険を告げた。彼の体が生前のような人間の姿からは程遠いことは理解していたが、このデスナイトはそれ以上の格上の存在だった。その威圧感に、腐敗した肉体がまるで砕けそうになるような感覚が走る。だが、それでも彼は引き下がるわけにはいかなかった。倒すことは到底できないとわかっていても、成長するためには挑むしかないのだ。
「……俺は……進むしかないんだ」
デスナイトが低く唸りを上げ、大剣を振り下ろす。その圧倒的な剣圧に、彼は咄嗟に剣を構えて防ごうとするも、衝撃は全身に響き渡り、思わず膝をつきそうになる。それでも、彼の中に眠る生前の記憶と意志が奮い立たせ、朽ちかけた肉体が何とか持ちこたえた。
「俺が……こんなところで、終わるわけにはいかない……!」
気力を振り絞り、再び剣を構え直す。直接倒すことは無理でも、彼はデスナイトの一撃をかわしながら、少しずつ反撃の機会を探っていく。刹那的に繰り出される攻撃を回避しつつ、その強大な力に身を削られながらも、一瞬の隙を狙い続ける。
数度の攻防の末、彼はようやく一撃を与えることができたが、それは表面を掠めただけでデスナイトにとっては取るに足らないものでしかなかった。それでも、レオナルドはその刹那の打撃によって微かに自らの力が成長しているのを感じ取った。彼の腐敗した肉体は少しずつ強化され、存在感が増していく。
倒すことはできない、だが逃げずに戦い抜く──その小さな進化の積み重ねが、いつか人間の姿を取り戻すための道となるだろう。歯を食いしばり、決して折れない意志でデスナイトとの距離を取りながら、再び剣を構え直した。
「俺は、必ず……ここを抜けて帰るんだ」
その決意を胸に、彼は迷宮の闇の中で格上の存在と対峙し続けた。
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