#3 峰賀澄 花恋
あっ。悠太ちゃんみつけた!
ねえ、桜子おねえちゃましらない? ……そっか。かくれんぼしてるのかな。ピアノのおへやもさがしたのに、いなかったの。
うん? うーん。そう。悠太ちゃんの言うとおり。
なんでわかるの? そうだよ。きのうのよる、かくれんぼしてたの。
うん。かくれんぼ、まーくんと。
ちがうの。アタシからさそってあげたの。まーくんのこと、アタシがめんどう見てあげなきゃなの。
アタシほら、プリンセスだから。
……あっ、まちがえた。プリンセスもうそつぎょうしたの。あたし、レディなの。レディだから、まーくんのめんどう見てあげるの。
うん。
かくれんぼ、たのしかったよ。
えっ、どこにかくれたって?
うーん。言わない!
え?
だって。お母さまに言うでしょ?
だから言わない。
言ったらおこられるばしょなのかって? そ、それも言わない!
うん? 『ぜったい言わないから』って?
ウソ! とってもウソよ! 大人ってすぐそういうウソをつくって、あたししってるもん。だってあたし、大人だから。
ウソつかないから、けーやくしょをかく?
けーやくしょ……。アタシしってる。けーやくしょ、大人がやくそくするときの……しってる。しってるもん。オトナだから。
うー……うん……けーやくしょ、書くなら……うん。いいよ。 ほんとうに言わない?
ほんとうのほんとうに言わない?
約束してね。
ゆびきりしてくれる? ゆーびきりげんまん。うそついたら、すっごくおこる。ゆびきった。
うん……かくれたのはね、くらの中。
本当は入っちゃダメって桜子おねえちゃまにも梅香おねえちゃまにもお母さまにも言われていたけれど、うん。
だって、くらってぜったいにだれも入ってこないでしょ?
かくれんぼ、勝ちたかったの。あたしに勝ったときのまーくん、あたしをとってもとってもとーってもムカムカさせてくるから。
ぜったいに、ぜったいに、勝ちたかったの。だから、くらならぜったいに勝てるって思って入ったの。
えっ? くらの中にだれかいたか?
あはは。悠太ちゃんヘン。
だって、くらの中はだれもはいっちゃいけないんだよ? お母様とのお約束。
ほんとうにだれもいなかったか? うーん……。
あ、でも。アタシ、くらの1ばんめのおへやにかくれたんだけどね。
くらの2ばんめのおへやでね、ふるいじゅうたんの上でねむっちゃってる人いた。
”えんかいのひ”って、”ふらふらの人”多いのヤんなっちゃう。
あたしね。『そのじゅうたんフカフカなの分かるけど、ここでねちゃだめだよ、カゼひいちゃう』って思ったけど。こえ出しちゃったら、アタシがかくれてることまーくんにバレちゃうかもしれないし。
だから、アタシなにも言わなかった。
でもその後けっきょくまーくんに見つかってかくれんぼまけちゃうし。もう。
えっ。ねてたの、どんな人か?
うーん。おぼえてないや。2ばんめのおへやのとびら、ぶあつくて大きいから。あんまり見えなかった。
ね。アタシがくらに行ったのナイショね。だれにも言わないって、やくそくまもってね?
あれ。悠太ちゃん、どうしたの?
<続>
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