第1話
──「以降は勧誘時間です。4限終了のチャイムが鳴ったら各自教室に戻ってください」
部活動選びにあまり興味がなかったためボーっとしていたら部活動紹介が終わっていた。野球部と水泳部が合同でお笑い路線の部活動紹介をしていたことだけは印象に残っている。
高校の部活も子供のころから惰性でやっているテニス部にしようかと思い、テニス部を探していると声をかけられた。
「きみ! 写真とか、興味ない?」
写真部と書かれたビラを差し出しながらそう言う女子の先輩は緊張したような表情をしている。
「写真ですか」
考えてもいなかった部に声をかけられて、意図せず意外そうな声が出る。
「カメラ持ってなくて不安になる子もいるけど大丈夫! 持ってなくても部で貸し出せるものがあるし、今はスマホのカメラでも全然OKだから!」先輩は食い下がるように勧誘を続けてくる。「なんなら撮らなくても被写体として所属とかでもいいし」
先輩は笑ってはいたものの、自分でも何を言っているのだろうかという表情をしているように見えた。
「でも、もうテニス部に入ろうかと思ってまして」
「あー……そうなんだ。前からやってたの?」
「一応小学生の頃から」
「そっかあ」
なぜか先輩が一瞬ホッとしたような顔をしたように見えた。安堵の理由が気になったが、見間違いの可能性もあり、その理由は聞けなかった。
「すいません」
「ううん、気にしないで! 引き止めちゃってごめんね、テニス頑張って!」
特に興味がなかったためテニス部を先約として挙げたが、新しい何かを始めるには良い機会だったのではないかと今更になって気になってきたものの、周囲を見渡してもその先輩を見つけることは出来なかった。制服のポケットに留められたカメラのモチーフが付いたヘアピンが特徴的だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます