第14話 栗雛霧谷が誘拐された理由

「霧谷、改めて私立クリエイター学園へようこそ」


 リカは男装から女性の服に着替えていた。


「……」


 改めて見ると金髪でスタイルが良く綺麗な純白なみずみずしい肌である。


「霧谷、見とれてる?」

「……」


 栗雛は首を横にふる。


「つれないな霧谷」


 リカは綺麗な青い瞳で栗雛の瞳を覗き見る。


「……」


 リカの目を見ると引き込まれそうな瞳を無言で栗雛は覗き返して行く。


「霧谷は取り込まれずにありのままの俺を見てくれるから良いな」


 呆けた声でリカは言う。


「(それより、僕は何で誘拐されたんですか?)」


 栗雛は手話でリカに聞く。


「誘拐したのはクリエイター学園に入学させるためだよ」


 リカは笑顔で言う。


「(なんで?)」

「俺たちが欲しい人材だからだよ」


 リカは笑顔で答える。


「(どこにでもいる声帯を失った無力な人ですよ)」

「霧谷は迷惑系の男を誰にもばれずに倒したのに?」


 リカは作り笑顔で言う。


「(僕が倒したのは実践や動画を見た者に比べて、平均以下だったから処理出来ただけですよ)」

「霧谷が倒したのは武闘派の迷惑系だよ」


 リカは説明をする。


「強さの度合いで言うなら真龍家の優秀な警備員、運動部の先生を手玉にとるぐらい余裕で迷惑系配信者にやられたんだよ」


 リカは淡々と説明をする。


「(たまたま対処出来ただけですよ)」


 栗雛は無表情で手話でリカに言う。


「霧谷、君は自分がどれだけ凄いかを自覚することが目標だね」


 リカは引き込まれる笑顔で霧谷の瞳を覗き込む。


「霧谷、君の意思決定を無視して、強引に誘拐してしまったことは申し訳ない」


 リカは立ち上がり頭を下げる。


「どうしても、霧谷が不要品ゴミクズ以下の学園に入れさせるのが嫌で俺たちは家族会議して今回の誘拐をしたんだ」


 リカは強い口調で栗雛に言う。


「(ゴミクズ以下?って、僕の住んでる付近だと一番レベルが高いはずですよ)」


 栗雛は手話で説明する。


「学園のレベルは高いが、大半の大人がクズしかいないんだよ」


 リカは不機嫌そうな表情で言う。


「君が入る学園は何かしらの理由をつけて、どこかに転入させるように仕向ける予定だったはずだよ」


 イライラした様子でリカは話をする。


「あそこの学園は見栄えだけが大事だからね」


 呼吸を整えてリカは話をする。


「霧谷、君は声帯を失って話せないからね」


 リカは控えめな声で言う。


「(そうですね)」


 手話で栗雛はリカに返す。


「霧谷、前も聞いたが声を失ってつらくないのか?」


 リカは栗雛の瞳を覗き込む。



[栗雛霧谷side]

 リカの瞳は嘘偽りなく答えろという目で見ていた。


(僕なりに嘘偽りなく答えないとな)


「……」


 栗雛は呼吸を整える。













「()」


 僕は手話を使わずリカの瞳を覗き返して、一生懸命、口をパクパクして答えた。

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