第10話 わたくしは霧姫(きりひめ)シア。趣味は栗雛霧谷を吸血?することです。

[栗雛霧谷side]

「……害虫が来ちゃいましたね」


 栗雛が聞こえない声で作り笑顔で愛美は言う。


「……」


 声が聞こえた方向を見ると綺麗な純白の肌とスタイルが良い青い髪の少女がいた。


「ねえねえ、きりやちゃん」

「?」


 気づいたら栗雛の目の前に青い髪の少女が近づいていた。



 妖気な笑みで青い髪の少女は栗雛の瞳を覗き込む。


「(ごめん、シアちゃん、今、飲み物ないんだよね)」


 手話で栗雛は青い髪の少女に伝える。


「(代わりになる物?)」


 手話で栗雛は青い髪の少女に聞く。


「……」


 栗雛は困った表情を見せながら人差し指を出す。


「おい!待て害虫」

「ありがとう」


 青い髪の少女が栗雛の人差し指をシュっと何かで傷がつき血がにじみ出る。


「いただきます」


 栗雛の人差し指を青い髪の少女はカプと口にいれ始めた。


「……」


 栗雛も恥ずかしい様子で青い髪の少女を見る。


「……」


 ちゅぱちゅぱと青い髪の少女は顔を赤くして美味しそうに人差し指から出ている血を舐めて吸っている。


(変わらないなシアちゃんも)


 人差し指をチュウチュウとしている姿を見て栗雛は安心した表情を見せる。






[雛風愛美side]

 霧姫シアがいたことにあたしは気づくことが出来なかった。


(この害虫シアは気づいたら、きりちゃんの近くにいる)


 シアが栗雛の人差し指を愛おしそうにチュウチュウとしていた。


(きりちゃんと握手して害虫シア対策をしておけば良かったな)


 愛美は対策の為に栗雛の手にシアちゃんが嫌いな匂いを仕込もうと考えて握手しようとしたが、タイミング悪くシアが現れた。


「……」


 シアはチラっと愛美を見る。


「……」


 シアの目には、愛美の行動はお見通しだよと言ってるような感じがした。


(あたしのカンストした視力をフル活用して、警戒して回りを見ているのにシアちゃんだけはいつも見つけられない)


 愛美は殺意を向けてシアちゃんに視線を合わせる。





[霧姫シアside]

(ああ、愛美ちゃんの悔しげな表情が見えて満足)


 シアはちらっと愛美を見た際に悔しさを隠しているのをわかった。


(ふふふ、わたくしは愛美ちゃんの視力ではとらえられないよ)


 優越感を隠しながら栗雛の人差し指の血をチュウチュウと吸ったり舐めていた。


 (愛美ちゃんのすることぐらい手にとるようにわかっていたからね)


 (あたしは環境に溶け込めて気配を消せるから目で追うのは無理だよ)

 

(さあてと愛美ちゃん、ビッチメイドは……)














()


 人差し指を愛おしそうに血をチュウチュウと吸いながらシアは栗雛にマーキングする準備を整えていた。

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