第21話

二人の話を聞いても、亮平おじさんのことを悪だとは思えず。

 そもそも、おじさんはお金に困っていた私に、お金を援助してくれると言っていた。

 けれど、お世話になっている以上、迷惑はかけられない。その事を亮平おじさんに伝えると、おじさんは自分が経営している会社の事務で働くことを提案してくれたのだ。

 まだ少し働いた程度だが、前の会社より職場の雰囲気もよく。居心地の良い会社というのが、第一印象だった。


「私は、自分を恥じるような仕事はしてません」

「お前がそう思っとるなら、それでええやろ。せやけど、陸斗を引き取るんは賛成できん。

 ちゅうか、家もない状態で、どうやってみんねん」


 私がハッキリ言い返すと、逆に岩島さんに言い返された。ズバリと物を言う彼からは、肯定的な答えは出ない。


「確かに、そうですけど……。でも、かわいそうじゃないですか。あんなに帰りたくないって言っているのに」


 私の胸の中でスヤスヤと眠る小さな命。私は、気持ちよさそうに寝ている陸斗君の頭を優しく撫でる。


「そんなんいようけど、本当にそいつの面倒みれるん?

 中途半端なことする方がかわいそうなんたい」


 橋本さんにもハッキリ言われ、ぐうの音もでない。

 確かに、最後まで面倒を見れる自信はない。――と言うより、彼の言う通り、上手く世話が出来ず。本当に中途半端なことをし、結果的に陸斗君を悲しませることになるかもしれない。

 それでも、嫌がる陸斗君を施設に帰すことは出来ず。また、誰かの役に立ちたいと思う自分がいて。

 通りすがりの人がチラチラとこちらを見る中、私はゴクリと息を飲み。意を決して口を開く。


「それでも、泣く陸斗君を帰すことができません」


 辺りが一瞬だけ静かになったような気がした。

 すると、溜め息を吐いた岩島さんは、私から陸斗君を奪い取り、自身の車まで移動。そして、彼は後部座席の扉を開けて、陸斗君をそこへ寝かせた。

 岩島さんは、きっと分かってくれたのだ。――という淡い期待を抱いていると、彼はこちらを見て口を開く。

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