第7話

全てを終えたのは夕暮れ時。今日は白石さんの部屋に泊まることになった。

 岩島さんは神田さんに呼ばれ。橋本さんは少し不満を言っていたが、城山さんに言われて渋々帰宅。残された私は、白石さんの車へと乗り込む。

 助手席へ座ると爽やかな大人の香りが鼻をくすぶり、綺麗な車内は白石さんの性格を表している。


「食事をして帰ろう」


 運転席に座っている白石さんは、心なしか嬉しそうで。声色が普段より明るく思える。


「もちろん、二人でだ」

「わかりました」


 二人しかいないのにあえてそう言うのはなぜか。理解は出来なかったが、私は彼の申し出を快く受け入れる。

 すると、白石さんは微かに口元を緩め、車を走らせ始めた。

 公道を走っている最中、少し離れた所に見える信号が黄色から赤へ。前を走る車が止まると、白石さんは車間距離をあけて車を止めた。

 洋楽が流れる中、白石さんは私の方へと左手を伸ばし、私の手に指を絡める。


「ずっと、こうしたかった」


 辺りの光に映し出された白石さんは艶めかしく見え、女の私でも嫉妬してしまうほど美しい。


「沙羅」


 私を見つめている彼は、薄い唇を動かして私の名を呼び。そして、ゆっくりと顔を近づけてくる。

 夜の魔法というのは恐ろしく、好意を抱いているのかさえ分からない状況でも相手を受け入れてしまう。

それがいけないことだということは、分かっているつもり。だけど、魔法はなかなか解けず、そのまま行為を受け入れてしまった。

 唇に柔らかい感触が触れると共に、白石さんの息が口内に流れ込んてくる。普通のキスで終わると思っていたが、そんなはずもなく。舌を絡めてくる彼は、離したくないと私の頭部に手を添える。

 すると、後ろから聞こえてくるクラクションの音。信号はいつの間にか青に変わっていた。


「すみません」


 なぜ謝ってしまったのか。その理由は自分でも分からないが、罪の意識に囚われ。また、新たな魅力に酔いしれ。

 食事をした後、白石さんの部屋へ着いた後。闇夜の魔法が解けぬまま、私はまた罪を犯した。

 薄暗い部屋の中にある、黒が強調された清潔なベッドの上。私の上に覆い被さった白石さんは、ネクタイを外して上着を脱ぎ捨てる。普段の白石さんからは想像できないほど、今の彼は獣と化している。

 頬を赤く染めて彼を見つめていると、彼の喉がゴクリと音を立て。私の唇の味を確かめるように唇を重ね、指を絡め。

 やがて、舌は首筋を辿り、肌に跡をつける。なんとも言えぬ感覚に甘い声を出せば、白石さんは顔を上げて艶めかしく笑む。

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