第4話

ハッキリと物申した白石さんの表情は、清々しいほどスッキリとして見え。先程までの様子が嘘だったかのように、今の彼は堂々と立っている。

 すると、白石さんは岩島さんの返事を待たずに、こちらを見て、


「心配かけて悪かったな」


と言った彼の口角が微かに緩む。私は頭を振って、


「元気だと分かって、逆に安心しました」


 私がにっこりと微笑み返すと、彼は安堵したように息を吐き、


「そうか」


と、穏やかな声で返事をした。

 「それと」と、彼は話を続け、


「俺はお前が幸せになるよう努力するから。だから、お前は俺の側で幸せになって欲しい」


 その話を聞いて、私はどう反応していいかわからなかった。しかし、白石さんのような男性から言われて嬉しくないはずもなく。口元が緩むのを悟られないために、手でそれを覆う。


「こいつも美味しいとこ持っていきよったで。ほんで、公衆の面前で、しかもワシの前で沙羅にプロポーズしとるし。

 ホンマ、ワシの周りにはコソ泥と変なおっさんしかおらへん」


 和やかな良い雰囲気を壊すのはいつも岩島さんで、彼の口からは文句しか出ていない。


「それなら、みんなで幸せになればいいじゃないですか」


 私がパチンと手を叩いて言うと、岩島さんは間抜けな声を出して、


「お前の脳内楽園か何かか? お前、かぐや姫にでもなったつもりか? ほんで、月やのうて楽園に帰るんか?

 この面子を全員婿にしてみい。毎日殺し合いやで」

「私はそういうつもりで言ったんじゃないんですけど」

「お前、そう言えは許される思うとるんやろ? 思うとるな?

 ホンマ、ズル賢い女やな」


 岩島さんの無神経な発言に腹が立った。けれど、それと同時に安心している自分がいる。

 なぜなら、この日常が戻ってこないと不安になっていたからだ。


「やっぱり、たっさんやった」


 そんなことを思っていると、男性の声が聞こえてきた。その陽気な声に、私は聞き覚えがある。

 振り向いた先には黒いスーツ姿の孝之さんがいて、その隣には小百合さんと高校生くらいの少年がいる。


「孝之、お前も来とったんか」


 岩島さんが反応すると、孝之さんは彼の隣のソファーに座り、


「白石の身内の葬式に、俺が来んわけないやろ? ちなみに親父も来とうけん」

「オヤジもか?」


 孝之さんの話を聞いて、岩島さんがあからさまに嫌そうな顔をした。

 すると、白石さんは颯爽と歩いて孝之さんの側に立ち、


「オジキに姐さん。お忙しい中、俺の妹の為に御足労いただきありがとうございます。感謝してもしきれません」


と、彼を見て頭を下げた。

 すると、孝之さんは困ったように笑いながら、


「堅苦しいんたい。来るのは当たり前やけん、そげなこといらん」

「そうよ? 来るのは当たり前。そんな挨拶する仲ではないでしょ?」


と、小百合さんも笑っている。

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