第5話

「はい」


 返事をした白石さんが、部屋の中へ入っていく。続いて橋本さんが入ったので、私も中へ入った。

 部屋の中には机や書類が入った棚。そして、パソコン等があるだけで、特に目新しい物は見当たらない。

 白石さん達がソファーに座った。私は彼らの向かいにあるソファーに腰掛ける。

 上座にいる高峰さんは、また煙草を吹かして口を開く。


「たっちゃん達が捕まったんだってな。今朝のニュースで言ってたが、ありゃ嘘だな」

「捕まったのは本当のことですよ」


 白石さんが指摘すると、「ああ」と高峰さんは声を漏らして、


「違う、違う。俺が言ってんのは内容の話。たっちゃんがヘマするわきゃねえ。ありゃ、誰かに嵌められたな」

「高峰さんもそう思いますか? 実は俺達もそう考えていたところです」

「なら、さっさと助けろよ。お前なら出来るだろ?」

「それが、今回はそう簡単にはいかないんです」

「何でだ? ……いや、俺が当ててやる」


と、白石さんと話していた高峰さんが、ローテーブルの上にある灰皿で煙草の火を揉み消した。そして、彼はまた口を開く。


「警察が絡んでる。それも、本部長クラスではなく、警視監クラスが」

「その通りです。ですが、なぜ警視監クラスの人間が、オヤジを嵌めようと企てたのか理解できません。今まで何もなかったというのに、おかしな話です」

「田所会の会長と国会議員が密会している噂は知ってるか?」

「風の噂で聞いたことがあります。ですが、詳しくは知りません」

「だから、たっちゃんの事を恨んでる奴……あいつ、何て言ったっけ? 田所会の金城?」

「北城です」

「そう、その北城も国会議員とグルなんかもしれんわけたい」


 高峰さんはそこまで言うと、ソファーから立ち上がった。すると、彼は近くにある小型冷蔵庫の前まで移動し、それを開ける。


「なんか飲むか?」

「いえ、結構です」


 冷蔵庫の中を漁っている高峰さんが聞くと、白石さんがすぐに答えた。

 パタンと冷蔵庫の扉が閉まる音が聞こえてくる。その直後、頬にひんやりと冷たい何かが触れた。缶コーヒーだ。


「姉ちゃんは飲み」


 あ、と私は口から声を漏らして、


「ありがとうございます」


と言ってそれを受け取った。


「野郎にはやらねえよ」

「別に欲しくねえし」


 高峰さんが舌を出して言うと、橋本さんがムッとした表情で言い返す。

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