第4話

一度駅の中へ入り、北口から外へ出る。そして、九州国際会議場方面へと歩く。

 すると、二階建てのビルの前で白石さんが立ち止まった。それから、彼は二階を見上げて口を開く。


「ここだ」


 『高峰探偵事務所』、二階の窓には確かにそう書いてある。明かりが点いているので、中に人がいるようだ。


「さっさと用事を済ませようや」


 すると、橋本さんが真っ先に建物の中へ入っていく。


「何でかちゃ!? 意味わからんし!」


 暫くして、橋本さんの声が聞こえてきた。何だか、良くないことが起きているようだ。


「あいつを先に行かせた俺が馬鹿だった」


 白石さんは、やっぱりとでも言いたそうにしている。そして、彼は建物の中へ入っていく。

 私も彼に続いて、建物の中へ入った。階段を上って二階へ行くと、Tシャツにジーパンというラフな格好をした男性が、部屋の前に立っているではないか。

見た目は若く見えるが、良く見れば四十歳そこそこに見えなくもない。


「だから、なんで俺が見ず知らずの野郎に協力せないけんのか? 女なら大歓迎だけど、男は帰れ」


 そう言い放つ男性は、きっと高峰さんに違いない。彼は金髪の頭を掻きながら、面倒臭そうに話している。


「高峰さん、お久しぶりです。相変わらずお元気なようで、安心しました」


と、白石さんが挨拶をした瞬間、高峰さんと目が合った。すると、彼はニッと笑んで、


「白石、お前は俺のことをよく分かってらっしゃる」

「……何がですか?」


 分からないと白石さんは言っているが、その真意は分からない。何せ無表情なものだから、何を考えているか分からないのだ。


「女を連れてくるなんて、気が利くねえ」


と、高峰さんが言った瞬間、「はあ?」と、橋本さんが声を出した。


「こいつ何言っちゃってんの? 頭お──」

「何か誤解を招いているようですが、俺はそんなつもりで沙羅をここへ連れてきたわけではありません」


 橋本さんの話を遮るように、白石さんが話し出す。

 すると、笑顔だった高峰さんの表情が一変し、真剣な顔になった。


「とりあえず、中へ入れ」


 そう促す高峰さんは、もう笑ってはいない。先に中へ入っていく彼は、茶色のソファーに腰掛け、煙草を吸い始めた。

 高峰さんは、フーッと煙草を吹かし、


「早く入れ。時間がないんだろ?」


と、全てを見透かしたような口振りで、こちらを見ている。

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