第29話 魔王との戦い

「貴様ら…… よくも我が城を破壊しおって…… 許さん!」


 魔王城を壊されて、魔王はお怒りのようである。

 そりゃそうか。俺だって自分の家をいきなり壊されたら腹が立つだろうしな。


「ずいぶん怒っているようだけど、お前が魔王ってことで合ってるか?」


 こいつが魔王で決まりだと思うけど、一応聞いてみる。

 人違いだといかんからね。


「そうだ。我こそが魔王バルタザールである。人間ども、貴様らは一体何者だ!」


 魔王は自身が魔王であることを認め、怒鳴るように俺達に問いかけてきた。

 魔王らしく、実に上から目線な話しっぷりだ。


「俺達は魔王討伐の依頼を受けた冒険者だ。後ろにいるのは、魔王討伐の見届け人だ」


 なんか普通に魔王と会話できてるな。

 神様からもらったスキル『異世界通訳』のおかげだろうか。


「もし人間の国への侵攻を止めるのなら、お前を見逃してやってもいいが、侵攻を止めるつもりはあるか?」


「人間を亡ぼすことが魔族の使命である!」


 魔王は俺の問いかけを一蹴し、人間を亡ぼすことこそが魔族の使命だと叫んだ。


 次の瞬間、魔王の手から黒い炎が放たれ、俺に襲い掛かる。

 だが、魔王の炎は俺の体に触れる寸前で消えた。

 どうやら魔王であっても、俺達の魔法防御力を突破することは出来ないようだ。


「なっ! 何故だ!」


 魔王は驚愕の表情を浮かべる。

 魔法が通用しなかったことに、ショックを受けているようだ。


「魔法は無駄だよ。剣でかかって来い」


 俺はそう言って、『守護者の剣』を構える。

 魔王も漆黒の大剣を抜き、構えた。


「ならば我が剣で貴様を切り刻んでくれよう!」


 魔王が言い放つ。

 次の瞬間、魔王が俺めがけて跳躍し、大剣を振り下ろしてきた。


 ガキィン!


 俺は『守護者の剣』で魔王の剣を受け止めた。


 勇者の剣を受け止めた時みたいに、俺の剣がスパっと斬られてしまわないかちょっと心配だったけど、さすがはアダマンタイト製の『守護者の剣』だ。

 しっかりと魔王の剣を受け止めることが出来た。


「唯! 援護を頼む!」


 俺は唯に援護を要請する。


「まかせて! アイスストーム!!」


 唯がアイスストームの魔法を放つと、魔王を中心に吹雪が巻き起こった。

 魔王は冷気に苦しむ様子もなく俺に切りかかってくるが、動きがやや鈍くなっているのがわかる。

 この程度じゃ魔王を凍らせることが出来ないけど、動きを鈍くすることくらいは出来るようだ。


 俺は唯の援護に乗じて、魔王に向かって猛然と斬りかかる。

 魔王も負けじと大剣を振るってくるが、動きの鈍さが仇となり、俺の剣が魔王の左腕を切り飛ばした。


「ぐわあああ! 我が腕が!!」


 魔王が苦悶の叫び声を上げる。


「観念しろ魔王! お前の負けだ!」


 俺は魔王にとどめを刺そうと剣を構える。

 が、魔王は不敵な笑みを浮かべている。


「ふはははは! なかなかやるではないか! だが、まだ終わりではないぞ!」


 そう言うと、魔王の体から黒い霧のようなものが噴出し始めた。


「何か様子が変だ、ソフィアはマイホームの扉の前に避難して!」


「わかったわ!」


 マイホームの周辺は、俺達以外は入れないようバリアが張られている安全地帯だ。

 ソフィアが安全地帯にいることを確認し、あらためて魔王の方を見る。


「これが我の真の姿だ! 震えて眺めるがよい!!」


 魔王が雄叫びを上げると、体が巨大化し始める。

 あっという間に魔王は、ドラゴンのような体に牛のような頭を持つ怪物へと変貌した。


「ゴアアアッ!」


 魔王は咆哮をあげると、俺達に向けて炎を吐く。


 炎の範囲が広すぎて避けられず、俺達を直撃する!

 が、何とも無い。


 唯の方を見ても平気な様子だ。

 マイホームのバリアに守られたソフィアは、腰を抜かしていたけど無事のようだ。


 この怪物、見かけは派手だけど、俺達の魔法防御力を突破するほどの実力は無いようだな。


「行けるぞ、唯!」


「うん。やっちゃおう!」


 唯がアイスランスの魔法を連発すると、魔王の巨体に氷の槍が次々と突き刺さる。

 そして俺は魔王の手足を斬る! 斬る! 斬る!

 足を切り落とされた魔王が崩れ落ちる!


「これで終わりだ!」


 俺は魔王の頭めがけて剣を振り下ろす。


「ぐああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 魔王は断末魔の声をあげ、ついに動かなくなった。


「やったー! 魔王をやっつけたよ!」


 唯が俺の元に駆け寄ってくる。


 ソフィアも喜びに満ちた表情で俺達のもとにやってくる。


「アキラ、ユイ、ありがとう! これで王国に平和が戻るわ!」


 俺達三人は抱き合って喜びを分かち合った。


 こうして、俺達の手によって、魔王は討伐されたのだった。

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