影武者生活(2)
少女姫姿のセリアラは王宮の廊下を歩いていた。
少女姫の姿を目にした侍女たちが挨拶してくる。
侍女A「姫様、ご機嫌うるわしゅう」
少女姫姿のセリアラ「ええ。皆さんもいつもご苦労様です」
侍女B「まぁ、もったいなく存じます」
侍女C「姫様、最近はずいぶん落ち着かれましたね」
少女姫姿のセリアラ「そ、そうですか?」
セリアラは内心あせった。普段の姫様通りにしているつもりなのだが。
廊下を走るイメージでも定着しているのだろうか?
とはいえ、むやみに走ったりするのもあれだし…。
少女姫姿のセリアラ「そ、それでは皆さん、ご機嫌よう。おほほほほ…」
少女姫姿のセリアラは早足でその場を去った。
侍女A「やっぱりちょっと雰囲気が変わった感じもするわねぇ」
侍女B「いつもセリアラ相手に はしゃいでいたからね」
侍女C「いいんじゃないかしら。姫というのは、本来こういうものでしょう?」
・・・
セリアラは目的地である王妃の部屋にやって来た。
セリアラが影武者生活を始めてから、そろそろ2か月ほど経つ。中間報告のために王妃の部屋を訪れたのだ。
王妃の部屋の前に立つ衛士に労いの言葉をかけてから、部屋に入る。
少女姫姿のセリアラ「失礼いたします」
部屋にいた王妃は少女姫姿のセリアラに笑顔を向けた。
王妃「まぁ、いらっしゃい、姫」
王妃はいつも少女姫に対するように声をかけて、その後いたわるような小声で続けた。
王妃「いらっしゃい、セリアラ。調子はいかがですか?」
少女姫姿のセリアラ「はい。その…王妃様におかれましては、ご機嫌うるわしゅう…」
セリアラも小声で答えた。
王妃「ふふふ。そんなに緊張しなくても大丈夫です。貴女が影武者であることを知る者がいない中で行動するのは、とても大変でしょう。この場では心を休めて良いのですよ」
少女姫姿のセリアラ「お心遣い、感謝いたします」
セリアラは感謝の礼をとった。
確かにこの場では少女姫のふりをする必要は無いから、ばれる心配をする必要も無い。
しかしながら、王妃様を相手に2人きりなので、どうしても緊張してしまうわけだが。
王妃「今のところは順調そうで、何よりですね」
少女姫姿のセリアラ「いえ、そうとも言えず…」
セリアラは失敗したと思った事をいくつか王妃に伝えた。
少女姫姿のセリアラ「このように、やはりどうしても姫様とは違ってしまいます。姫様の姿に変身できれば役に立てると思っていた自分が恥ずかしいです…」
しかし王妃は、セリアラを咎めはしなかった。
王妃「なるほど。でも、ばれていないのですから、大丈夫です。魔法は素晴らしい才能ですが、それよりも、貴女のそういう真摯な心がけを何より嬉しく思いますよ」
少女姫姿のセリアラ「王妃様…!もったいないお言葉、ありがとうございます…!」
王妃「貴女のその心が、いつか姫を助けることになるでしょう。これからもよろしくお願いしますね、セリアラ」
少女姫姿のセリアラ「はい、王妃様! 精進いたします!」
・・・
セリアラは幸せな気持ちで王妃の部屋を辞した。
こんな素晴らしい王妃様と姫様に仕えることが出来て、自分は幸せだ。
いつかきっと姫様と王妃様の役に立とう…!
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