影武者生活(1)

セリアラの、少女姫の影武者としての生活が始まった。


少女姫姿のセリアラ「はっ!やあっ!」

剣の訓練で、少女姫姿のセリアラは刺突剣レイピアの素振りをしていた。


教官「ほう!姫様、今日はなかなか安定しておられますな。日頃の成果がようやく出てきたようです」


少女姫姿のセリアラ(あっ、いけない!つい普段通りに動いてしまったわ…!)

少女姫は剣は得意ではないが、対してセリアラは少女姫よりは得意であった。

うっかり普段のセリアラ通りにやってしまったのである。


セリアラは最後にわざと失敗することにした。

少女姫姿のセリアラ「あっ?!」


セリアラはバランスを崩した。


教官「あぁ…。最後は惜しかったですな」

少女姫姿のセリアラ「はい…すみません」

教官「いえ、良いのですよ。ではまた最初からやってみましょうか」

少女姫姿のセリアラ「はい!」


どうやら教官には怪しまれなかったようだ。

セリアラは引き続き剣の稽古に精を出した。

少女姫は失敗しても決してめげないのだ。


・・・


セリアラは算術の問題に四苦八苦していた。


教師「姫様、今日は少々集中力を欠いておいでのようですね」

少女姫姿のセリアラ「はい…すみません」


体や手先を使うことは少女姫より得意だが、逆に頭を使うことは少女姫より苦手なセリアラ。

得意なことは失敗するふりをすることが出来るが、姿は少女姫に似せられても頭の良さは真似できないので、学問には苦戦していた。


しかしさすがに教師は少女姫が影武者と入れ替わっているとは思わず、普段少女姫と一緒にいるセリアラが長期間居ないので、そのせいで少女姫の集中力が欠けているのだろうと考えた。


教師「セリアラが居なくて気になっているのでしょうね」

少女姫姿のセリアラ「そ、そんなことは…無いと思いますけれど」

教師「いいのですよ。長いこと離れていると、心配でしょうし」

少女姫姿のセリアラ「そう…ですね」


セリアラは少女姫のことを思い浮かべた。

確かに、心配もある。

でもそれよりも、信頼感というか、安心感の方を強く感じる。

姫様アルちゃんのことだから、きっと元気にやっているだろう、と。


少女姫姿のセリアラ「でも、きっとセリアラは元気に過ごしていると思いますから。心配していませんよ」


少女姫姿のセリアラは優しい笑みを浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る