国王の兄
ある日、少女姫とセリアラは訓練場で
訓練場では兵士たちも訓練しているが、その一角で剣の教官から指導を受けていたのだ。
そこに、王妃がやって来た。
少女姫「お母さま!」
セリアラ「王妃様! ご機嫌麗しゅうございます」
王妃「うふふ。2人とも、元気そうですね。少し見学させていただいてもよろしいかしら?」
少女姫「もちろんです、お母さま!」
セリアラ「はい」
少女姫とセリアラは張り切ってレイピアの素振りをした。
王妃「2人とも、以前見たときよりも様になってきましたね」
少女姫「ありがとうございます、お母さま!」
セリアラ「恐縮です」
その横から、男が声をかけてきた。
国王の兄「精が出るな」
少女姫「おじさま! 来ていらしたのですね!」
国王の兄、すなわち少女姫の伯父もやって来たのだ。彼の側近の伯爵も一緒に居る。
国王の兄と伯爵は、普段は国の北側のある領地にいるのだが、たまにこうして王宮を訪れるのだ。
嬉しそうに伯父のそばに走り寄る少女姫と一緒にセリアラも近付いたが、黙って一歩後ろで立ち止まる。
国王の兄「姫も元気そうで何よりだ。しかし剣の腕はまだまだのようだな」
少女姫「はい、申し訳ありません…」
王妃「手厳しいですね。でもお義兄様と比べるのはいささか無理があるのではないでしょうか?」
国王の兄は剣の腕や軍の采配に優れている。
そのため、前国王(現国王の父)は次の王を兄ではなく弟にしたのだ。兄は北方の国からの侵略の対処に専念するように、と。
国王の兄「別に、俺に並ぶ腕前を要求しているわけではありませんよ」
国王の兄は一応笑顔を見せた。
・・・
談笑する少女姫・王妃・国王の兄・側近の伯爵の4人を、セリアラは少女姫の後ろから畏まって眺めていた。
周りには、セリアラの他にも、剣の教官もいるし近衛兵もいる。王妃のお付きの侍女や国王の兄たちの護衛の兵士もいる。
しかし中心にいる4人を除いて他の者はみな黙っていて、まるで置物のようだ。
セリアラは国王の兄が苦手だった。少女姫のことを見下している感じがするからだ。
それに、もうひとつ。彼は完全にセリアラのことを無視するからだ。
王族や貴族なら本来こういうものだという事は理解している、彼らは侍従や侍女をその場に居ても居ないものとして扱う。
ただ、セリアラの身近にいる人たちは違う。大人の侍女たちはセリアラを気にかけてくれるし、国王や王妃はセリアラにも話しかけてくれる。
普段そんな環境なので、国王の兄にはもやもやしたものを感じてしまうのだ。
また、別の意味で、国王の兄の側近の伯爵も苦手だった。
彼は国王の兄と一緒によく王宮を訪れるので、セリアラも顔を覚えていた。
彼もセリアラに話しかけてくることは無いのだが、セリアラの身体に何やら怪しい視線を向けてくるような気がするから…。
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