王妃の剣
4人(少女姫・王妃・国王の兄・側近の伯爵)の談笑は続いていた。
国王の兄「俺の剣よりも、王妃様の剣を見せてやった方が、姫の役に立つのではないですかな?」
王妃「そうですね…。たまには良いかもしれません」
少女姫「わぁ、お母さまの剣技、ぜひ見せていただきたいです! セリアラもそうですよね?」
セリアラ「は?…はい!」
少女姫から急に話を振られてセリアラはびっくりしたが、何とか返答した。
王妃「剣技というほどの事は出来ませんよ。王家の女性の剣は、戦うためのものではありませんから」
王妃は少女姫とセリアラに向かって微笑んだ。
少女姫「どういうことですか?」
王妃「そうですね…。少し見本を見せてあげるのもいいかもしれません。では準備してきますので、少々お待ちくださいね」
王妃は訓練場の控室に向かい、程なくして、白銀に輝く女性用の美しい鎧を着て戻ってきた。
王妃「お待たせいたしました」
少女姫「わぁ、お母さま、素敵です!」
国王の兄「王家伝来の鎧ですか。いつ見ても見事ですな」
伯爵「まこと、女性らしいフォルムが美しいですな!」
セリアラも王妃の美しい鎧姿に思わず見とれてしまった。
・・・
王妃「では、始めましょう」
王妃は少女姫たちの前に立った。
そして美しいレイピアを腰からすらりと抜き、真上に掲げてピタッと止める。
王妃「全軍、進め!!」
王妃はレイピアをビッと振り下ろし、同時に凛とした声を訓練場全体に響かせた。
振り下ろされたレイピアはまっすぐ前方を指して、またピタッと止まった。
セリアラは興奮が全身を駆け巡るのを感じた。
兵士たち「「おおーー!!」」
訓練場で訓練の手を休めて王妃の動向を見ていた兵士たちが、思わず鬨の声を上げたほどだった。
国王の兄「見事ですな! 俺に代わって北の守りの指揮を任せてもいいくらいです」
王妃「ご冗談を。わたくしに出来るのは掛け声を出すだけです。戦術などはまったく分かりませんもの」
伯爵「いやいや、王妃様が号令をかけてくだされば、兵どもの士気も否応なく上がるというものです」
王妃「恐れ入ります」
少女姫「お母さま、素敵でした!」
王妃「うふふ。ありがとう。いつか、この鎧とレイピアを貴女が身に付けるときが来るでしょう。そのときは、勇ましい姿を見せてくださいね」
少女姫「精進します!」
少女姫は興奮した様子を隠そうともしなかった。
セリアラも少女姫が美しい白銀の鎧を着てレイピアを掲げる姿を想像して嬉しくなった。自分が影武者としてあの鎧を着ることは無いだろうけど、少女姫が着る姿はぜひこの目で見てみたいものだ、と。
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