王家の合言葉

セリアラが少女姫と離れて侍女や影武者の修練をしているとき、少女姫は少女姫で別の勉強をしていた。

国王や王妃から直接、王家の者のみに伝えられる事(影武者にも伝えられない事)を教わっていたのである。


その最たるものは、王家の人間であるという証の立て方である。

仮に偽者が現れたときにそれを見破るため、あるいは、自分が偽者だと疑われたときに本物であると証明する手段である。

これはそもそも影武者と本物の区別をするためでもあるので、影武者には教えられないのだ。


その証の立て方とは、簡単に言えば合言葉である。

しかしただ合言葉を言うだけでは、万が一誰かに漏れた場合に簡単に真似されてしまう。

そこで、合言葉を覚えるだけでなく、それを伝える方法も考案されていた。


そのために、王家の人間のみに伝えられる秘密の数値(数十桁にも及ぶ)を1つ覚える必要があった。

これは2つの素数を元に算出された数値だと伝えられている。

それらの素数を用いてもうひとつ算出された別の数値があり、これは王家が管理する石碑に記されている。

誰かが王家の人間であると証明するためには、王家の人間なら知っている秘密の数値を使って、ある計算を行う。

その計算結果を受け取って、石碑の数値と共にまた別の計算を行うことにより、(秘密の数値を直接伝えずに)本物かどうかを確認できるのだ。

まるで魔法のようだが、魔法ではない。


なお、この計算には掛け算・割り算を正確に行えることが重要なので、ひたすら計算の練習を行う必要があり、

頭を使うことが得意な少女姫といえども、さすがに泣きそうになったものである…。

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