第71話 もうひとりのアリス後編
意識がなくなり、目がさめると真っ暗な闇の中だった
ふと、あの日の事を思い出した 王妃と戦ったあと意識を失った時、私は精霊王様と話をしていた
あの時、精霊王様が話していたこと
「アリス、いつか君はもうひとりの君…… 前世の君と対峙するだろう…… 誰も助けられない…… 君自身にしか乗り越えられない ただ、決してもう闇にのまれてはいけない 君自身を、君がどうして今世を生きているのかを信じるのだ」
真っ暗な闇の宙を見つめながら精霊王様の言葉を思い出した
「もうひとりの私……」
目が闇になれてきて体を起こした
するとなにやら人影がみえる
「あなた、あの時の」
あの、アイリーンの結婚式のブラウンの髪色の男性だった
「ふっ、アリス久しぶり」と彼は、形を変えた
その姿は紛れもなく「私」だった
「私?」
「そう、私は前世のあなた…… 人を妬み陥れる事に喜びを感じ人の気持ちを弄ぶ そんな事が大好きな あ・な・た それが私なのよ」
「そんな、あなたが私にどういった用があるの?」
「あなた本当に、今のままで幸せになれると思っているの?
どうして、あの時終わりにすればよかったのに……
あんな薬なんて飲まなければもう、この世界にまだ生きていることなんてなかったのに」
「どうして? 私が幸せになってはいけないの」
「今のあなたは虚像のあなたでしょ 嘘でかたまったあなたが本当に幸せになっていいはずがないでしょ! 」
「嘘なんかでは、ないわ
あなたこそが、私が道を間違えてしまった私なの……
人を羨み妬み周りが見えていなかったせいで出会える人達と誰一人出会えることが出来なかった…… 」
「あなたを、幸せにする訳にはいけない……
幸せになってはいけないのよ アリス…… 」
そう言って彼女は、私を闇の中にひきずりこもうと両手をにぎり精一杯引っ張ろうとする
「いや、私はそちらには堕ちていかない
堕ちるわけにはいかないの 」
「もう一度、やり直してアイリーン達を元に戻したのだからもうあなたはここには、用がないのよ!
生きる意味がもうないでしょ! 」
「生きる意味…… 違えてしまったこの世界を元に戻した後の私」
そう思った瞬間、力が少し緩み「アリス」に闇にひきずりこまれそうになった
すると、闇の中に雨が降ってきた
優しい雨が降って私達をつつむ
アリス……と私の名前を呼ぶ声が微かにきこえる
低く響く透明な声……
ああ、彼だ 優しく私の名前をよぶ
「あいつも、おまえの魅了の力に惑わされているだけなんだ 本当はあいつも誰もお前のことなんて愛していない」
「可哀想な前世のアリス……
魅了の力なんてはじめから持っていなかった……
今の私は 人と出会って、時間を重ねて その人達とお互いを知ることによって絆をつないできたの 」
「アリス」は引きずる手を弱めた
そんな「アリス」を抱きしめた
「ごめんね
もう、あなたとはサヨナラしてこれからも生きていく
ずっと、私はこの世界に戻ってから前世の自分を引きずって生きていた
それがどこか心の隅でもう1人のアリスを抱え込んでいたのかもしれない……
苦しめてごめんなさい
でも、もうあなたを解き放つわね
私は、この世界で 生きていく意味をみつけたから……」
そう言ってもう一度彼女を抱きしめると彼女は、微笑みながら消えていった……
闇が消え優しい雨が降る中、光が射してくる
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