第66話 風車の村

 次の日から早速領地の視察にでかけた

 アリスとセラは、魔法で服装や髪型、色も変えてすっかり別人になった


「セラ様、黒髪の短い髪も素敵です」


「アリスもブロンドの三つ編みも可愛いね」

 と御者席でふたりでいいながら馬車を進める


「なんだか、前にもこんな光景見た気がする」と馬車の中でロイがぶつぶつ言ってる

 今回は、魔導具修理屋の夫婦に変装をして領地内の町や村を周りながら町や村の現在の本当の問題点を見つけたいと思ってるのだ


「いやあ、まともそうな事言ってるけどセラ本当は魔導具触りたいだけなんじゃないの・・・・ 僕も行きたい!」

 とテリウスがゴネていた


「1週間で帰ってくる予定にしているから交代でお前が行けばいい

 いずれにしろそれ以上は仕事も溜まってるから無理だと思うしな」


「溜まった仕事片付けてから行けばいいのに・・・・」


「まあそう言うな、大きな魔道具が動かなくなって困っているという報告も受けているしな」


「大きな魔導具ってすごく気になるんだけど・・・・やっぱり僕が行くよ」


「いや、アリスにも領地がどんな所か見せてやりたいしな じゃあ、行ってくる」

 とアリスの手を引き半ば強引に出発していたセラだった


「あの時ちょっとテリウス様可哀想な感じがしたわ」


「まあ、帰ったら次はテリウスに行ってもらうよ」


「あなたたち二人とも魔導具を思いっきりいじりたいだけじゃあないわよね 視察よね? 」


「そうだよ、視察だよ」

 と言いながら誤魔化すようにキスをしてくる


 元々、お兄様時代から頬にキスをよくしていたセラだがあの「船の上」以降やたら頬ではなく唇にキスをしてくるから困ってしまう


 本当にドキドキするし、恥ずかしいからやめてほしい・・・・

 ほんっとにキスなんかで誤魔化されないんだから


 二人が御者席でイチャイチャしている間に最初の目的地「ハルン」に到着した


「わあ、あれは風車ですよね 私初めて見ましたすごい ! あちらこちらに風車がある」


「この村は小麦畑で有名な村でね 風車で製粉をおこなっているんだが最近この村に以前のような風が吹かないようになって魔導具で製粉を行なってるんだがその魔導具がいきなり全部動かなくなったららしいんだ」


「どうしてなんでしょうね」


「そこでこの優秀な魔導具師がやってきたわけですよ」

 とニコニコしながらセラは話す


 やっぱりこの人魔導具が触りたかっただけなんじゃないの?

 きっとこの話聞いた時から来たくて仕方なかったんだろうな

 と目をキラキラしながら魔導具の話をするセラを見ながらアリスはそう思うと思わずおかしくなってくすくす笑ってしまった


「まあ、とにかく村長の所に行ってみよう 僕のことはロイと呼んで、君はアリィと呼ぶね」


「わかったわ、ロイ」

 そう言って丘の上にある村長の家へと向かった


 家の玄関で声をかけるが返事もなく静かだ

 しかし、家の裏の方で何やら人の話し声がして賑やかだ

 裏に回ると敷物などを敷いて沢山の人が集まりみんなで臼うすで粉を挽いていた


「ごめんください、新しい領主様の使いで参りました ロイと申しますが村長はいらっしゃいますか」


「ああ、私が村長のトーマです、もしかして私の嘆願書を領主様がお読みいただけていたのでしょうか」


「ああ、そうです お預かりしています魔導具の調子が悪いとか」


「そうなんです、風が吹かなくなり今度は粉挽きの魔導具まで動かなくなりましてこのように手作業で挽いておりまして・・・・」


「大変ですね」


「実は粉挽きの魔導具だけではなく村の魔導具が全て動かなくなってしまいまして」


「とりあえず風車を一度見せていただけませんか」


「あ、はい・・・・そちらの方は?」


「妻のアリィです 」


「妻のアリィです 薬師をしておりますので体調の悪い方いらっしゃればお申し付けください」

(きゃあ、妻って・・・・)


「おお、それは助かります あ、先にご案内いたします」


「はい、よろしくお願いします」

 恥ずかしがっている場合ではないと反省しながらアリスも村長の後を一緒について行った


 風車の場所まで行き、セラは原因がわかった

「村長もしかして風はあの渓谷側から吹いて来ますか?」


「そうです、1年ぐらい前から吹かなくなったんです」


「それはそうだわ、あれでは通れないもの」と風の精霊であるエリィが私の耳元で話した


「そうねエリィ私も感じるものすごい量の瘴気を・・・・」


 うーむとセラは少し考えてからとりあえず報告はしておくか・・・とぶつぶつ言いながら村長に断りを入れて馬車に戻り通信機で誰かに連絡を入れていた


「アリス予定変更になった変装はとりあえず一旦おしまい アリス、 ロイ、ルーもな 少し手伝ってもらえるか」


「ええ」「俺もいいぞ」


「エリィも後で手伝ってくれ」


「了解したわ」


 そして、村長の元に戻った


「村長、実は魔導具修理の話どころではなくなってしまった」


「えっ?それはどういう・・・」と話をしている途中で空にだんだん黒い闇のようなものが広がってきた


「ああ、もう限界か 村長いますぐ村民を非難させてくれ」


「あ、はいでもあのロイさんは・・・・」


「すまない 村長 嘘をついた私はこのたび領主になったセラ・ロイ・ド・エトワールだ 彼女は婚約者のアリス・キャラウェイ・アズールレーン ここは私たちを信じて私たちに任せてくれ」


 そう言うとセラは指をパチンと鳴らし変装を解きロイが姿を現したと同時くらいに渓谷から

 ギエエエエエエエエエエエエ と魔物の声と大きな振動が村にまで伝わった


「きゃあああ」とそれまでの のどかな雰囲気が一変し、村民達は逃げ惑っていた

村長は、セラに指示を受けた通りにそんな彼等を冷静に避難させた


「アリスは最後だ、合図をしたら瘴気を浄化してくれ ロイは援護を頼むぞ」


 そして「それら」が姿を現した

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