第65話 新天地

 新しい領地は、中心部領主の城と城下町は王都に隣接した場所にあり馬車で40分程の所にあるがこの領地あの王妃の実家でもあり元公爵家でもあり領地がかなり広い

 まず、領主の城に入城した

 城に入ってまず驚いたのが使用人が少ない

 その代わりあちらこちらに魔導具のようなものが忙しそうに動いている

「今回、この領地の膿を出し切らないといけないと話し合ってね 」

 バルスーン公爵家の使用人をかなり処分したという事ね でも、城内の物があまりにもない所からみてもそれだけではないようだ


 執務室への廊下を歩いていると2歳くらいの男の子が柱の影からこちらを見ている

「こんにちは」と挨拶をすると照れくさそうにこちらを見ている

「ああ、エディこっちにおいで 一緒にお姉様の所へ行こう」

 セラが、呼ぶといそいそとこちらに来た

 恥ずかしそうにニコッと笑って私が手をだすと手をつないで歩きだした


 執務室に入るとテリウスと一緒にサティス・バルスーン元公爵令嬢が仕事をしていた


「サティス様」


「セラ様 アリス様、お出迎えもせず申し訳ございません」


「ああ、サティスいいよ あえて連絡しなかったんだから それよりふたりとも少し仕事の手を止めてもらってもいいかい アリスに今のこの領地の状態をアリスに伝えておきたいからね」

 エディを侍女に預けて 4人で応接室に入り防音魔法をかけた


「まず、ふたりともおめでとう 婚約式には出られなくてごめんね」


「テリウス、ありがとう いや君は、私がここを離れている間ひとりでここを守ってくれていたんだから」


「いや、サティスとジムがいてくれてたから助かったよ」


「ジムってあの生徒会にいたジムですか?」


「ジムだけじゃない、メグとスタンもいるよ」

 テリウスったらちゃんと優秀な人材確保していたんだ


「それで、サティスの事なんだけど爵位が没収された所まではアリスも知っていると思うけど……」


「テリウス様、ここからは私が自分でお話致します」


「アリス様、先に改めてお詫び申し上げます

 我が家門がデヴィッド・キャラウェイ公爵御一家そして国王陛下御一家にいたしましたことお詫びだけでは済むことではないのですが……

 あの夜、すぐにこの城は混乱に陥りました 心無い使用人の中には城内の金品等を我先にと、奪い合い城を出ていき、残った者は残った者でセラ様やテリウス様に取り入ろうとあの手この手で接触してくる始末で、結局おふたりとフェリックス様でその様な者や強奪し逃げた者は全て処分してくださいました」


 あの手この手って……


「あの、それでサティス様は今……」


「アリス様、私は今平民なので、様はいらないですよ 」とサティスは少し微笑んだあと

「実は、あの直後に母が弟のエディとともに無理心中をはかりまして…… 私がふたりを見つけた時には母は既にこときれておりましたが、エディはまだ息があり助かりました 幼いエディを抱えてどうしようかと思っている時にテリウス様にお声をかけて頂いて……」


「サティス…… 」思わず震える彼女の手を握りしめた


「エディはね、かなり辛い経験をしてしまったから今は魔法で記憶を消している

 でも、成長していく上で何がきっかけで記憶の蓋が開いてしまうかわからない その時彼を支えていくのも我々がしなければならない事だと思っているんだ」

テリウスが涙を流すサティスにハンカチを差し出しながら話する


「それと、僕はもうウィリアムにも伝えたんだがここの領地がちゃんとなったらいずれ魔塔に帰るつもりなんだ それまでは領地補佐ということで、僕は本当に領地も爵位もいらない」


「え、でもテリウス様……」


「アリス…… 僕は人間が恐いんだ そんな人間が領民に愛される理由がないだろう

 僕は、兄ともセラとも違うんだ」


 そういいながら笑うテリウスは泣いているように見えた


「王妃は…… 罪深いな…… 」ポツリとセラが呟いた


 その後部屋へと案内された私の部屋は、セラの隣の部屋で中からでも部屋が行き来できるように扉がついている


「城自体も作り直しているし、家具も全て新調しているからね インテリアは、またアリスの好きな様にしたらいいよ」


 落ち着いた雰囲気だが所々可愛い細工だ

 ヴィユンティ公爵家の私の部屋とつくりを同じにしてある

 長い時間一緒にいたせいか私の趣味をよく理解してくれている


 バルコニーをでると庭園が見え景色がひろがる


「素敵!」と言いながら ふと庭園のすみを見るとどこかでみた小さな家がある


「セラ様、あの家」


「ああ、キャラウェイ公爵家から移動させたんだ 俺と君がふたりきりで隠れるのに最適だろう」と悪戯っぽく笑う


「もう…… ありがとう 」思い出の詰まった家がそこにあるだけで新天地で不安がいっぱいだった私の気持ちが凄く楽になった


「セラ……大好き」

「知ってる」

 そう言って唇を重ねた

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