第64話 婚約式

気持ち良い快晴の朝 雲の隙間から光がキラキラと梯子のように降りている

「あれは、天使の梯子というのよ 」とカレンが教えてくれた


招待客が多いので特別に王宮の園遊会用のガーデンをウィリアムが提供してくれた


カトリーヌ渾身の作品と言われるドレスが1着用意されている

'白いドレスに薄いピンクのオーガンジーに金糸と銀糸で刺繍が ほどかされて花も散りばめた愛らしくそれでいて美しいドレスだ

編み込まれた髪の所々にも小花を刺していく

今日は、ヴィユンティ公爵家、キャラウェイ公爵家の選び抜かれた精鋭侍女の皆様の気合いの入ったお支度


「ええ? 本当にこれが私! 」とよく侍女様達の手にかかると思うのですが、

本当に大袈裟ではなく「ええ? これが私?」と思うくらい美しく仕上げてくれた


部屋からでるとセラが、魔法騎士団の制服の中でも特別な時にしか着ない制服を纏って立っていた

こちらに気が付きふりむいた

お互い言葉が出ず見つめ合ってしまった


「!!!」きゃあ素敵!と叫びたい


「あ、アリス、ストップ 後でふたりになってから、わかった?」


黙ってコクコク頷くとセラはホッとした顔をしながら


「アリス、いつも綺麗だけど今日は特別綺麗だ」


「!」もう、やめて〜心臓がもたないよ

とふたりでそんなやりとりをしていたら

シドに

「若様、姫様 ご入場ですよ」


「さあ、アリス」とセラが腕を出す

そっと手をおき彼と見つめ合い

ガーデンの門をくぐっていく


楽団の音楽が流れる中 拍手する招待客が見守る中お義父様お義母様 おじ様おば様が立っている白いアーチの場所まで歩いていく

お義父様からの挨拶で式がはじまり

招待客のひとりひとり挨拶をしていく

挨拶が一通り終わる頃音楽が流れ出しダンスが始まる


ダンスをしているとまた精霊たちが集まってくる 空からも光が降ってきて招待客が歓声をあげる

「もしかして、精霊たちみんなの歓声が癖になってない?」

「ああ、絶対そうだな」

ふたりで笑いながら見つめ合う


ダンスをしながらふと目をやるとガーデンの角の大きな木の下に精霊王様が立ってみつめていた

ふたりで踊る足をとめ、精霊王様に礼をした

精霊王様は微笑みながら手を軽くふり消えていった


式がおわり招待客を見送ったあと

おじ様とおば様のところに行った


「おじ様、おば様ありがとうございました

あの、本当に遅くなってしまって申し訳ないのですが……(あ、だめだ泣いてしまう)あの……お父様お母様と今からでもこれからもお呼びしていいですか」

私が泣くじゃくりながらそういうと

お父様が黙って泣きながら抱きしめた


「本当に遅くなってごめんなさい」


「いや、いいんだ これからもアリスは、だれがなんと言っても私達の娘なんだから」


やっと、お父様お母様と呼べたのだ

父と母は本当に長い間辛抱強く、そして私を温かく見守りながら待ってくれていたのである


そして、その後、ヴィユンティ公爵家とキャラウェイ公爵家の家族が集まりセラとあの海底での話をし、4人の眠る姿と会ってもらった

婚約式ということだけでなくふたつの家族としてもまた、なにかひとつの区切りになった1日となった


そして、2日後私達は、領地へと旅立った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る