第37話 セラお兄様の旅立ち
剣術大会が終わり 数日するとテストの期間になった
1年生のうちは、ペーパーテストのみだが2年生、3年生になると実技もある
実技テストをしている2年、3年の横を通らないと図書館へ行けない時もある
いつもの4人で放課後図書館へと行こうとしたら女生徒の人垣ができていた
2年生が演習場で実技テストをしていたからだ
先日の剣術大会以来、ノアとセラお兄様の人気が凄いことになっている
相変わらずセラお兄様は、研究室にこもっているからまだいいほうだが、ノアはどこにいくのにももみくちゃである
人垣の向こうに図書館への通路がある
「せーの」でいくよとクレアが声掛けする
「せーの!」と人垣の隙間をぬけていく
なんとか図書館まで着いたがいつまでこんな事続くんだろう
「アリス、こんな事じゃあ交流会どうなるんだろうね」
「うーん、わかんないや」
もう、交流会もなんとか休めないだろうかとも秘かに思ったりして…… こちらからパートナー申し込んでおきながらしかもあのドレス! 7着のドレス! ああ、やっぱりノアに申し訳なさすぎる
一瞬でもそんなこと考えた私って最低と落ち込んでいた
「まあ、成るようになる」
とクレア達が私の肩をポンと叩く
そんな日が続きあっという間に試験期間も終わって交流会の2日前となった
貴族の学生達は、王都にあるそれぞれの邸宅に帰り、平民の学生は、王宮から侍女や侍従(アカデミー卒業生の先輩たちが支度に来てくださる
そんなバタバタしている時に大きなニュースがアカデミー内を駆け巡ったマリア・ハニーライド嬢がバルスーン公爵家の養女になったというのだ
「バルスーン公爵家というとサティス・バルスーン先輩の?」
「なぜ? 」
「バルスーン公爵家って王妃様のご実家じゃない……」
「じゃあ…… 」
「婚約破棄と婚約が秒読み? 」
とまわりの女生徒が噂している
あの、剣術大会でのアイリーンとマリアのやり取りを思い出した
◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇
「あなた、フェリックスの事も、私の事も好きにすればいいって思っているでしょ
私わかってるのよ
でも、今のままのあなたじゃあ、本当に欲しいもの可愛い誰かに持っていかれるわよ」
「なにを言っているかわからないわ」
「あら、あなた今…… 凄く焦ってるでしょ」
「焦ってなんかないわ 婚約破棄をすれば全て元に戻るもの」
「そうかしら、そう上手くいくかしら」
「・・・・・・・・」
「私、あなたが好きだからイライラするのよ
私達もっと仲良くできると思うわ」
「仲良く…… 」
「そう、欲しいものは確実に手を入れたいでしょ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇ ◇◇◇◇◇◇◇◇
やっぱりあの時の話ってそういう事だよね……
あの日から色々考えて今までの事を振り返ってみて考えた
ヴィユンティ侯爵家に行く前に自分達の部屋でクレア達にきいてみた
「あの、答え合わせがしてみたいんだけど…… 」
「テストの? じゃないよね アイリーン様関係? 」
「実は剣術大会の時マリアさんとお姉様が話しているのを聞いてしまって……」
「アリス、いつの間に」
「もちろん偶然なんだけど……」
と私は、聞いた話をクレア達に話した
「やっぱり、お姉様は、婚約破棄を覚悟しているのかしら」
「うーん、本音なのか 負けず嫌いなのか 」
「アイリーン様も他に好きな人がいるのかしら?」
「そんなの聞いたことない」
「まあ、なるようになるよ
アリスが悩んでも仕方ない」
「全部なるようになる か…… 」
スッキリしないままヴィユンティ侯爵家に向かうと思いがけないことが待ち受けていた
「え? セラお兄様が旅に出られた…… 」
「そうなの…… 魔塔から急な要請があってどうしてもアズールレーン王国に行かないといけない」って……
「じゃあ、アイリーンお姉様のパートナーは…… 」
「テリウス王子がパートナーになったの、それも剣術大会終わった直後には決めていたみたい」
「え!」
「あの子ったら剣術大会の翌日に早期卒業の手続き全て済ましてそのまま魔塔に入ったのよ…… びっくりしちゃったわ」
「私、お兄様から何も聞かされていませんでした……」
一言もなにも言わずに行くなんて、自分で驚くくらいショックだ
一体交流会目前になってどうなってるの?
自分の部屋に入りベッドに潜り込む
眠れず何度も寝返りをうつ……
ふと窓をみるとキラキラした光が近づいてくる
あの光は! ガバッと起き上がり窓をあけると
光が部屋に飛び込んできた
「アストリー」セラお兄様の契約精霊星の精霊アストリーだった
「アリス〜!」とアストリーが抱きついてきた
「ねえ、アストリー お兄様は? 」
「セラは、まだ船の中なの」
「じゃあ、やっぱりアズールレーンに行くのね」
「そうなの、それでアリスに自分は、元気だからって急に旅に出てごめんって伝えてって
落ち着いたら手紙書くからって……
あとは、えっとなかったっけ」
「ありがとう
アストリー お兄様が元気ならそれでいいよ
アストリー少し休んでいって あと私からも言付けお願いしていいかしら」
そう言ってあわてて着替えて厨房へと行った
明日おばあ様に焼こうと思っていた冷蔵庫のスコーン生地をだして焼いて その間ゆずのジャム そして生クリームも準備した
スコーンとともに紅茶をいれたポットもバスケットに入れて
そして、カードに
「お兄様、お体に気をつけてね
元気で帰ってきて」と。
ほかにも沢山書きたい事は、あるけど逆に言葉が出ない。
涙が、思いがけずポツンと落ちた
文字には、当たらなかったからそのままカードを添えた
アストリーは、しばらく私の精霊達と遊んでからお兄様への元へと帰って行った
「アストリー、私が呼んだら来てくれる?」
「ええ、もちろんよ アリスの事は私も他の星の精霊も見守っているもの」
そう言ってアストリーは、流れ星のように消えていった
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