第36話 starry sky 後編
アリスと僕はよく出かけた アリスは、どこに行っても人気者で領民からもよく声をかけられる
そして最近では、今まで一人で出かけても僕には声を掛けなかった領民達が「若様」と声をかけてくる
冬になり父上、母上そしてアリスの4人でミラー辺境伯の領地にある我が家の別荘へと遊びに行った
ミラー辺境伯の領地には、貴族の別荘がある
夏は、避暑地としても人気があるところだ
「ミラー辺境伯家というと先日長男と次男の方が流行り病で亡くなられて今はディアス・ミラーが結局辺境伯家の当主になられているんですよね」
「ミラー団長が? 」
「ああ、そうかアリスは、ミラー辺境伯を知っているんだったな」
「私の師匠の師匠です! 」
「じゃあ、私はその師匠の師匠の師匠だ! 」
というと父上は、大きな声でハハハと笑った
「おじい様凄いです!
じゃあ皆さん笑い声が大きいのもおじい様のが移ったのね」
「そうか、そんなに大きいか! ハハハ」
とまたバカでかい声で嬉しそうに笑った
「でも、セラお兄様は大きな声で笑わないですね」
そもそも、僕は思いっきり笑ったという記憶がない
そんな話をしていると雪景色が見えてきた
「あ、お兄様! 山も町も全て真っ白です」
「ああ、雪が見えてきたね 」
「こんなに積もっているのは初めて見ました。
それよりお兄様お声が少し掠れてますが大丈夫ですか? 」
「あら、風邪かしら」
「母上、アリス大丈夫です
声変わりも終わりかけなのでそのせいかも知れません」
と少し咳払いをした
「セラ、声変わりまだだったのか……
では、もしかするとマナも不安定になっているかもしれんな 気をつけるに越したことはない」
「父上、ありがとうこざいます」
僕は、マナという魔力の核を人より大きく体内にもって生まれて来たのだが、そのマナが成長過程で時折暴走してしまうというのだ
「ほら、あの森を越えるともうすぐ別荘につきますよ」
護衛の騎士が、馬車の窓越しに伝えてきた
馬車からおり、僕はまず2階にある自分の部屋に行った
部屋の窓から外を見るとアリスが森に向かって走っている
「アリス! 何してるんだ」
部屋の窓を開けてから叫んでもアリスは聞こえないのか振り向きもしない
慌てて階段をおり走って追いかけていった
すれ違いざまに執事のシドに
「セラ坊っちゃまどうされましたか? 」
「アリスが森に! 連れ戻してくる」
そう言ってアリスを追っていった
森の中にはいりアリスの名前を呼びながら探すが返事がない
すると微かに森の奥からアリスの声がした
「ねえ、頑張って大丈夫だから」
そこには、血だらけになった大きなフェンリルを手当てしようと祈る眩い光に包まれたアリスがいた
「アリス!これは一体」
「お兄様……」
振り向いたアリスの瞳は、透き通りながら輝く美しいエメラルドグリーンで髪の色が透き通り輝くプラチナブロンドだった
その瞳がゆっくりと瞼が閉じて彼女は、そのままフェンリルにしがみつくように倒れ込み意識を失ってしまった
「アリス、アリス」と呼びかけていると急にフェンリルが唸り出した
フェンリルの血の匂いで集まってきたのか魔物の群れがいた
まわりをみても木の枝くらいしか手元にない
思い切って覚えたてのファイヤーボールを撃つとカラダ中が引きちぎされそうなくらい熱くなり大きな炎が一瞬にして魔物の群れと森を焼き尽くしてしまった
「あ……」アリスの名前も呼べないまま意識を手放した
ふと意識がもどると目の前は、満天の星空だった
痛い体を少し起き上がらせると、満天の星空の下に白い光り輝く大きな樹木がそびえ立ち、そのむこうには草原が広がっていた 白い衣を纏い佇むその人は、ゆっくりと僕に近づいてきた
「僕の愛し子は、また面白い子を連れてきたね
しかも、今回は本人は来られなかったみたいだね」
そう言いながらその人は、顔を近ずけて
僕のアゴをクイっと人差し指であげた
「ふうん、君は凄く膨大な力を持っているね
でもマナが凄く絡まっている……
さぞかし今まで辛かっただろう
我慢強いいい子だね 君は…… 」
そう言いながら彼は僕の身体を横に寝かせて胸に手を置いた
光が放たれ吸い込まれそうな感覚のあとなんとも言えない解放感に満たされた
「あなたは? 」少し朦朧としながらも意識が戻る中彼にたずねた
「私は、精霊王 君もまた珍しい精霊に愛されたようだね」
彼はそういうと星空を見上げた
すると、星空から星が流れてきて僕の周りをクルクルと回る
「ほら、名前をつけて契約をしてあげて」
「名前……」
優しく精霊王は、頷いた
「アストリー」
そういうと星の光は、精霊の姿を現した
「セラ、素敵な名前ありがとう」
「ああ、アストリーよろしくね」
「さて、セラこれをアリスにつけてあげてまだ暫く必要なのに無理するから壊れてしまった これから無茶しないように彼女のこと見張っていておくれ
しかし、君の潜在能力は凄いね 君が何者になるかが楽しみだ」
そう精霊王に言われたあとまた意識を失ってしまった
目が覚めて、「夢?」と思ったが手には精霊王から預けられたピアスをにぎりしめていた
横にはフェンリルを抱きしめながらアリスが眠っていた
アリス、その髪色が本当の君の色なんだね
薄く光るプラチナブロンド そっとアリスの耳にピアスをつけて眠っているアリスを抱き上げた
まわりを見ると焼け焦げたはずの森が元に戻っていた
「精霊王様ありがとうこざいます」と礼をした
別荘に帰ってからアリスと僕は、父上にめっちゃくちゃ怒られた
こんなに怒られたのは久しぶりである
しかも、血だらけで、大きなフェンリルまで連れ帰ってきたのだからあんな父上と母上の驚く姿は、初めてみたかもしれない
アリスといると自分の世界がどんどん広がっているのかもしれない
その夜、別荘の部屋のバルコニーでアストリーと星空を見上げていた
「ねえ、セラ アストリーってどういう意味?」
「あ、星の子って意味さ」
「そのままなのね」
「パッと思いついちゃてさ、僕にはどうも洒落た名前をつけるセンスがないようだ
でも、呼びやすいし、音がいいだろ僕は、気に入ってるんだけど君は、どうかな?」
「あら、アストリーって洒落ているじゃない 私も好き」
「君は……どうして僕を選んだの?」
「そうね…… この広〜い星空の下であなたを見つけてしまったの
精霊の愛し子があなたの名前を呼ぶ声が私にも届いてきたの」
コンコン
部屋の扉がノックされ返事をするとアリスが入ってきた
「お兄様、温かいココア持ってきました バルコニーにでていて寒くないの? 」
とバルコニーに出てきた途端アストリーに気がついた
「お兄様も精霊と契約されたんですね
えっとこの子は……見た事ない」
「星の精霊なんだよ」
「凄い!お名前は?」
「アストリーだよ」
「アストリーよろしくね」
アリスがそういうとアストリーは、ふたりのまわりをクルクル舞っていた
「ほら、アリス星空が凄く綺麗だよ」
「本当だ!
私こんなに綺麗な星空きっとずっと忘れない」
と笑う アリス
僕もだ……僕も決して忘れない……
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