第24話  恋人って

「人の視線ってこんなに疲れると思わなかった 」

 そうアカデミーの食堂でランチをいつもの3人としながら私が弱音をはいていると、

 

「まあ、初日だから仕方ないし、ほらノア様の事もあるから余計にね〜」とクレアがニヤニヤしながらからかう


「だからそんなんじゃない」


「まあ、私が集めた所、キャラウェイ公爵家の次女って今までアカデミーに来てたのかー? とか、どうしてあんな美少女いままで気がつかなかったのかー? とか、それと、ノアの溺愛が凄くて隠してたんじゃないかとか…… ふふふ……」


「お願い、カレン違うから 知ってるでしょ」


「でも〜、パートナーになるのは本当なのだし、とりあえず様子をみたら?」

 

「そうそう、キャロの言うとおり」

 といいながらクレアが小さなトマトを食べていた


 そんな風に話をしているとカレンの後ろからジョンが手をだしカレンのお皿のポテトをひょいとつまみ頬張る

「あ、ちょっとジョンったらお行儀悪いんだから」

 と言いながら嬉しそう いつみても仲がいい


「お! アリスちゃん

 やっぱりメガネはずしたほうが綺麗じゃん

 絶対その方がいいって」


「そうだね、僕もそう思う」

 ジョンと一緒にいたクレアのお兄様 クリストファーもにこにこしながら褒めてくれる


「お兄様、アリスの事好きになっちゃったらダメよ」


「綺麗だけどならないよ

 僕には婚約者がいるしそれに友達の恋人を好きになるわけにはいかないからね」

 とクリストファーが椅子をひいて席に座りながらそう言う


「え? いや友達って そんな? はあ?」

 となっていたら


「だって、ノアに聞いたら アリス・キャラウェイは、恋人だって演習場の更衣室で今朝みんなの前で言ってた」

 とジョンが自分の持ってきたランチをバクバク食べながら言う

 

「ごめん、みんなちょっと先にいくね」そういって慌ててランチの席をはずした


 はあ? えっと私パートナーになってと言ったけど恋人なんて言ってないよね

 もう、ノア どういうつもり ノアどこかしら?

 ノアの居そうな所 探し回って回ってやっとアカデミーの外れにある木の上で寝ているノアを見つけた


「ノア、ちょっと降りてきて

 ねえってば」

 ノアは、全然返事しない

 もう仕方ない!っと木に登り、あともう少しでというときに足が滑った


「きゃ!」

 というと同時にがっちりした腕に身体を引きよされた

 ノアの腕に抱きしめられ、唇が触れそうなくらい顔が近い

 一瞬時間が止まったようにお互いをみつめあった

 ハッと我にかえり慌てて身体を離す


「いや、ごめん 悪かった」

 ノアが顔を真っ赤にしながら謝ってくる


「そ、それよりあの、なんでみんなにあんなこと言ったの」


「あんなこと?」


「私が、その …… あなたの恋人って」


「ああ、その方がいいだろう」


「いいだろうって」


「だって、その方が色々邪魔くさい誘いも断れる お互いにな 盾にもなれる これから何かあった時お前を守ってあげやすくなる」


「守って ……」

 どうしてノアがそんな事いうの


「俺が何があってもお前を守ってやるよ」

 

「どうして、そんなこと言うの、ドレスのことも、どうしてそこまでしてくれるの」


「ん、お前のこと 気にいってるんだと思う」


「な…… 」


「お前に本当に好きな奴ができる間だけでいいから俺を恋人にしろ、わかったなアリス」

 顔を両手で包まれながら真剣な漆黒の瞳で見つめられた


「い、今は、よくわからないし、好きな人って私ずっと幼い頃から好きな人がいるの」


「好きな人って……」


「幼い頃に離ればなれになって会えてないけど」


「じゃあ、まだ俺が恋人候補になっても問題ないな」


 ノアは、そういうと私をひょいと抱き抱えて木の上から飛び降りた

 

「きゃあ」


「さて、どうするこのまま教室まで送ろうか」

 といたずらっ子のように笑いながらノアが耳元で囁く


「いや、下ろして大丈夫!」


 お姫様抱っこで教室までなんてとんでもない


「じゃ、じゃあまたね 」

 そういって慌てて教室へと戻った


 ノア、ドキドキが止まらないじゃない……でも不思議と抱きしめられた時嫌な感じがしなかった なにか懐かしいそんな感じ

 でもそれ以上にドキドキが強すぎてノアのいたずらっ子のような笑顔が浮かんでその日は、もうなにも考えられなかった

 けれどまだ、彼の事をどんな風に思っているのは、自分でもわからない




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