第7話 ウィルという少年

 おじ様にお願いして5歳からはじめていた剣術の鍛錬は、5年たった今でも続けている

 リック・ウェールズ副団長を師匠と呼び、彼もまたこんな小娘の私を見捨てず優しく、時に厳しく面倒をみていてくれる


「よし!アリス 今日は、ここまで」


「ありがとうございました」

 礼をしたあと、リック師匠と汗をふき水分補給をする まだ騎士達の剣を交える音がする中、一際激しく打ち合う音がする

 騎士団長のディアス・ミラーとその弟子のウィルだ

 一見よく見かけるブラウンの髪色に、ブラウンの瞳 でもその瞳は、涼しげで凄く整った顔立ちをしている

 ウィルは、ディアスと遠縁にあたるらしく彼は、7年間毎日鍛錬を行っている


 ただ、彼は、私なんかと比べものにはならなく大人顔負けの腕前の持ち主である


「ウィルは、すごいね」


「いや、アリスも凄いよ。最初は、すぐに鍛錬にも来なくなると思っていたよ

今では、打ち合う練習にも参加出来るようになった 君は、頑張っているよ」


 リックは、笑いながら言ってくれた

とても素直な性格で裏表のない人柄の彼だ 本心からそう思ってくれているのであろう

そう思うと、恥ずかしくて何も言えなかった


「ウィルは、やはりね、俺から見ても才能の塊な上に人一倍努力家だ 彼自身のもつ覚悟も違うしね」


「覚悟?」


 そんなやり取りをしているとウィル達も、休憩に入ったようだ

 ウィルは、私の姿を見ると笑顔で駆け寄ってきた


「アリス!」

  うーん、ウィルったら!わんこみたいで可愛い

 でもこのわんこ出会ったころは、中々警戒心激しくて喧嘩腰だし、いつも事ある毎にぶつかり合ってたんだけどいつの頃からお互い色んな話ができるようになった

 もしかすると、今信頼できる友達ってウィルだけかも知れない。



 私はウィルのこと、知らない事も多いんだけどね

 まあそれは、お互い様かな?


「アリス!アリスは今日お城のお茶会にいかないのか」


「え? ああ、今日だっけ そういえば朝から侍女さん達みんな忙しそうにしてたっけ?」


「そ、そんな呑気にしていていいのかよ! やっぱり、こ…… 婚約者候補って噂本当なのか」


「何言ってんのよ、ウィル 私は、行かないし、婚約者候補のわけないでしょ! 」


「あ、そうなのか、そうだよな 剣振り回すじゃじゃ馬が皇太子の婚約者になるわけないな」


「ちょっと!それは聞き捨てならない!」

 そう言いながらウィルの頬を思い切りひっぱる


「ハハハハ!ごめん ごめん じゃ、俺練習戻るわ!またなアリス」

 大きな笑い声で笑いながらウィルが走って騎士団長の元にまた戻っていった。

 どうも、この師匠と弟子は、笑い声が凄く大きい

 笑い声まで師匠に似るのかしら


 でも、今日お茶会だったらアイリーンもいないし、ゆっくり家に行って日記や手紙なんかも確認できる時間があるかもと早々に部屋に戻り離れの家に向かうことにした。


 部屋に戻ろうとしていたら、丁度アイリーンが出かけるところだった

 薄いイエローの生地に白い小花があしらえてある可愛いらしいが上品なアイリーンらしいドレス


 少し緊張した面持ちのアイリーンに、

「お姉様、笑顔だよ!笑顔! お姉様は、笑顔が一番素敵なんだから忘れちゃダメよ」

 と声をかけた


「ありがとう、アリス」満面の笑みでアイリーンは、返してくれた


 前世でもそうだったんだけどお姉様は、真面目すぎて中々本心が分かりにくいところがある

 前は、王子ともそういった所ですれ違ってしまったけど今回は、私が邪魔しないしお姉様も私や、周りに虐められたりすることもなく5年間すごしてきたから大丈夫でしょ

 ってそう思ったらつくづく私酷い奴だなって落ち込んでしまった


 はーっ!早く魅了のチカラについて見つけなきゃと部屋にもどり、エレンに伝えたあと離れにある家へと向かった

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