第5話 秘密の引き出しで見つけた物

 庭園の奥にある温室の更に、奥を進むとひっそりとその小さな家があった

 5年ぶり・・・・・

いや、今の私には、5年とプラス13年ぶり すごく懐かしい両親と過ごした小さな我が家だ


 カールが、鍵をカチャと開ける 

扉を開くと薬屋の小さなカウンターがあり、その向こう側にテーブルと椅子がある

 きちんと掃除と手入れがされているのか埃っぽさは一才ない

 カウンターとテーブルが置かれている場所の間にある階段を上がろうとする足をとめ、

「カール、ここで待っていてもらえる? それともおじさまの執務室に先に戻っていてもらっても大丈夫だけど・・・・・・」

カールにそう問いかけると


「アリスお嬢様、本日はここでお待ちしてあります。私のことは気になさらずゆっくりお部屋をご覧ください」


「ありがとう、カール」

返事をしながらドキドキしながら階段を駆け上がる


「アリスお嬢様、慌てずお気をつけて」

とまたいつものように優しくカールは声をかけてくれる


 階段を上がると部屋は3つある

両親の部屋 私の部屋 そして、もう一つ私が入ったことのない部屋

 まず、魅了の力封印の手がかりを知りたいから両親の部屋の扉を開いた

 両親のベッドにサイドテーブルにクローゼット 

アンティークな雰囲気でいてシンプルなインテリア

 ランプも花の形になっている 

母の趣味だったのかな?

 部屋の片隅にロールトップデスクがある 何かヒントになるものがあるかもしれない

 ロールトップデスクの引き出しを全て開けてみるがこれといってヒントになるようなものはなかったけれど

 中央の引き出しの奥を探っていると指先に何かが引っかかった 

違和感を感じ奥を強く引っ掻いてみるとわからないように薄い木の皮で小さな鍵が貼り付けてあった


 この鍵と周りをみるとロールトップデスクの蛇腹扉の部分に小さな鍵穴があった

 どうやらこの扉のスペアキーのようだ 

差し込み少し開けるのに力がいったが蛇腹扉を開くことができた

 机部分と小さな引き出しが3つ引き出しを開けてみたが特に何もないようだインクとガラスペン

 もう一つには便箋と封筒 そして封蝋 

 何も見つからないわねと封蝋の入った引き出しをつい力が入り引き出してしまった

 その時、その奥にもうひとつ引き出しを見つけた


 他の2つの引き出しも引き抜いてみると同様に奥に引き出しがあった

 隠されていた引き出し 

何かあるとしか思えない


 全ての引き出しを開けてみると日記帳が3冊 何通かの手紙 

そしてピアスに指輪と3本の鍵があった


 この日記を全て読むのには今は時間がない 仕方なく私は全てのものをだして引き出しを元に戻した

 今日はとりあえずここまでと両親の部屋を後にし日記帳と手紙以外のものをポケットに押し込み自分の部屋にも入ろうとした時、下からカールが私を呼びに上がってきた

「アリスお嬢様、本邸にお戻りになるように旦那様からご連絡がございました」

 外をみるともう夕日で空が紅く染まっていた


「もうこんなに時間が経っていたのね

ごめんなさいカール 

それと長い間待っていてくれてありがとう」

「アリスお嬢様、お気遣いありがとうございます

 しかし、私に謝らなくともよろしいのですよ」優しくカールは微笑んだ


 3冊の日記帳と手紙を抱きしめながらまたくるねと小さな我が家を後にした。



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