第2話 はじめましてお姉様

「娘のアイリーンには今晩夕食の時に紹介するわ」


「アイリーン様・・・・・・」


「そうあなたよりひとつ上の我が家の娘 

 だからあなたにはお姉さんになるわね 

 今は家庭教師が来ているから夕食の時に紹介するから仲良くしてくれたら嬉しいわ 

 アリス疲れたでしょ

 夕食までゆっくり休んでね」


「ありがとうございます」

 パタンと扉を閉め公爵夫人たちが出ていくと私はベッドに潜り込んだ


 シンと静かになった部屋で前世のことも一生懸命思い出そうとする


 そもそも私はどうしてあんなにアイリーンのことを嫌っていたんだろう? 

 というか、もう憎んでるレベル?

 それともただ単に嫌がらせだったんだろうか

 自分のしたことだし、自分自身の気持ちのはずなのにどうしてアイリーンにあそこまでしたのかが思い出せないしわからない

 ただ、彼女への罪悪感だけが残っている

 第一王子フェリックス・サラスーラ彼に対しても・・・・・

 私・・・最低だな・・・・

 そう呟きながら死に戻りという突然のことに疲れたのかそのままうとうとと眠ってしまった


「アリス様、起きてください アリス様」


 声をかけられ瞼をうっすらと開けると人なっつこい笑顔で名前を呼ぶ若い女性がいた


「えっと・・・・・あなたは?」


「ご挨拶が遅れましたアリス様の専属メイドになりましたエレンと申します よろしくお願い致します」


「よろしくお願いします」


「アリス様使用人に敬語でお話しなさらないでくださいね」


「あ・・・・・・」


「さあ、夕食ですよ ご用意いたしましょうね」


 エレンに身支度してもらい夕食に向かう


 いよいよアイリーンと再会だ 

 あの時私が古い馬車に乗せられ修道院に向う道中に、遠くに見えた丘の上に佇んでいたアイリーンが見えた


 見送りに来たのか

 それとも修道院に向かう堕ちた私の惨めな姿を見に来たのか


 あの時、遠くにいたはずのアイリーンと目が合った気がする


 少し緊張しながら開いた扉の向こうをまっすぐ見つめて足を進める


 もうすでに着席してる幼いアイリーンがそこにいた


「はじめまして、アリス 

 アイリーン・キャラウェイと申します 」

 席を立ち上がり丁寧に美しく挨拶をするアイリーン


「はじめまして、アイリーン様 

 アリス・キャラウェイと申します 

 アリスとお呼びいただければ嬉しいです」


「さあ、アリスも席に座って食事にしようではないか」

 公爵に促され席に座り食事を始める


 もうすでにアイリーンは妃教育をはじめているのだろうか食事をする所作や姿勢がすごく美しい

 ブラウンの長く美しい髪 透き通った薄紫の瞳 

 そして6歳と思えないしっかりした上品な顔立ちだ


「アリス、良ければ私のことお姉様と呼んでもらえたら嬉しいわ 私本当の妹ができたみたいで嬉しいの」

 アイリーンが私に微笑みかけながらいった


 前世と一緒・・・・・・

 アイリーンの笑顔が前世の記憶にあったアイリーンの笑顔と重なり合った

 いつも優しい笑顔で話しかけてくれたり、気遣っていてくれたアイリーン

 ああ、そうか・・・・・・・

 私、優しくて完璧でいて優しい両親そして素敵な婚約者全てを持っているアイリーンが妬ましかったんだ


 自分は何ひとつ努力せず彼女の隠れた努力や涙も知らずに妬んで憎んで・・・・・


 前世の自分の愚かさに改めて気づいて顔が上げられず俯いて・・・・そして涙を落としてしまった


「ごめんなさい!!アリス急にこんな事お願いして嫌だった?」

「違うんです お姉様嬉しくて・・・・・・

 嬉しくて ありがとうございます

 私も本当のお姉様と思っていいですか? 

 仲良くしてくだされば嬉しいです」

 そういうと公爵様と公爵夫人も嬉しそうに微笑んでいた


 今世ではこの家族と一緒に幸せに生きていけるようやり直してみせる




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