第3話 テーブル占拠
ペットショップからカリンを連れ帰る直前、オーナーは陽気な笑顔を見せてこう言った。
「多分、あちらこちら走り回ると思うけど。」
合点承知!その時は思っていた。子猫とはいえ、一日中とは言わないが長い時間をケージの中で過ごす環境から、自由に家中を動き回れるのだ。それ位は想像がつく、そう思っていた。
カリンは三日もすれば、家中どこでも走り回るようになってきた。テープルの上だろうと平気で走り抜けていく。コラッ!!と言っている間には、もう姿がなく別の部屋に入ってしまっているのだ。困った事に、私達が食事している時でさえ遠慮がない。
こりゃ、相当なおてんばさんだなと親子共々、ため息を吐いてしまう。いつの間にかカリンはお構いなくテーブルの上に座って辺りを眺めていた。
降りなさいとやんわり言った所で当然、通用しない。手を挙げるふりもしてみたのだが、カリンさん、まさかの反撃。仁王立ちして両手で応戦してくるとは、気が強い。
カリンの動きに合わせて、アルプス一万尺を歌っている場合ではない、これでは単に遊び相手になっているだけじゃないか。仁王立ち態勢で歌の半分辺りまで余裕で立っているとは、なかなかのバランス感覚だなと感心するも、それは今じゃない。
はて、どうしたものか・・・途方にくれる。
己の可愛さに負けてなんでも許してもらえるなんざぁ、人間様をナメてもらってはいけない。ダメなものはダメと覚えてもらおうじゃないか。
勃発、人間と猫の仁義なき戦い。その火ぶたは落とされた。
とはいえ、まだ3カ月の子猫。ぽんっと頭を叩いても、力加減が弱すぎて意味をなさない。お尻の上を叩いても、逆にお尻をあげてくるだけで逆効果だったりする。猫が嫌う音の方が効果的かもしれない。
テーブルをあがる度に机を叩いて騒音攻撃。居座れば、目の前で手を叩く。それでも強情にも動かないこの猫は、もう家の主気取りか。30年早いわっ。
カリンの目を見据えながら、真横でテーブルを叩いて退けさせる。
この人間と猫のテーブル占拠権争いは、その後も続いている。少しずつだが、テーブルを避けて走り回るようになってきた。勝利は人間の手にあれ!
てか、これって猫と同レベルじゃないか…手段、形式なんていうものは人間側の勝手な取り決めにしかすぎない。
猫には猫の社会性というのがある。相手のテリトリーに侵入すれば、威嚇される。そうして猫同士は互いの距離感や自分の居場所を決めているのだ。そのうち、カリンのお気に入りの場所が決まってくるだろう。そこは食事をするテーブル以外でお願いしたい。
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