第9話 レストランのメニュー
リースとカリーナは屋敷に帰るとリースが持ってきた浴衣やドレスを取り出して香水の話を始める。こうしてカリーナはリースの扱う浴衣やドレスに合う香水の制作を始める。
リースはロックに言う。
「お前様、目的の物件を建物ごと買いましたわ。」「借りるのではなかったの。」
「ちょうど2階にレストランが入っていたからオーナーになりました。」「レストランまで手を広げるのかい。」
「はい、普通のレストランなので何か目立つメニューは無いかと思って、お前様に知恵を借りることにしました。」「僕は料理ができないよ。」
「大丈夫です。お前様が食べたいものを言ってくれるだけでいいのです。」「だったらハンバーグ食べたいな。」
「ハンバーグとはどのような食べ物ですか。」「ひき肉に玉ねぎなどを混ぜて作るんだけど確かつなぎに卵を使ったかな。それを丸く固めて焼いたものだよ。」
「この世界にはありませんね。シェフに作らせますから、明日、試食してください。」「ハンバーグ作ってくれるの。」「楽しみにしてください。」
リースとロックは午前中からレストランへ行く。リースはシェフに注文してハンバーグを作らせる。シェフはリースの説明を聞いて試作を繰り返して、昼過ぎに料理として出せるものを作る。
今日はレストランを臨時休業にしているので、ロックとリースの貸し切りである。シェフは自信をもって2人にハンバーグを出す。付け合わせには温野菜がついている。
そして、白いパンがだされる。ロックはナイフでハンバーグを切ると肉汁が出てくる。そして、口に入れる。
「うん、これだよ。久しぶりだなー」「お前様、うれしそうね。」
「うれしいよ。ハンバーグを食べることが出来たんだから。」「これは、シェフのお手柄ね。」
リースはシェフをねぎらう。リースは自分もハンバーグを食べる。ステーキとは違って柔らかい食べ物に感動する。リースはシェフに言う。
「ハンバーグはメニューに加えることはできそう。」「はい、自信をもってお勧めできます。」
「お前様、何か意見はありますか。」「ハンバーグにチーズを入れたチーズインハンバーグもおいしいよ。」
「ロック様、チーズとは何ですか、牛とかの乳から作るんだけど白っぽい塊で熱するとトロトロになるんだ。」「もしかしてガードのことですか。」
シェフはガードを持ってこさせる。彼はガードをスライスしてロックに差し出す。ロックはそれを口にする。
「うん、これのことだよ。」「では、さっそく試作してまいります。」
シェフはやる気を出している。ロックは白いパンをちぎってハンバーグの皿のソースをしみこませて食べる。リースがロックに聞く。
「それって、おいしいの。」「うん、結構いけるよ。本当はご飯が良かったな。」
「ご飯ですか。」「この世界では米を作っていないからご飯は食べられないよ。」
「もしかして、稲からとれる米のことですか。」「リース、知っているの。」
「食べたことはありませんがアンデル地方で作られていて、召喚者が持ち込んだそうです。」「アンデルか行きたいなー」
「アスモダイオス魔王国と言う南方の国にあります。行くのは無理です。」「そーかー、食べに行きたいなー」
「ご飯のことは忘れましょう。パンはどうですか。」「柔らかくておいしいけど。」
「こんなパンが欲しいとかありますか。」「菓子パンかな。」
「どんなパンですか。」「白いパンの中に、あんや生クリーム、チョコレートが入っているんだ。」
「斬新ですね。検討しましょう。」
リースは真剣にメモを取っている。ロックは菓子パンが食べられる日は遠くないと考える。ロックとリースが話しているうちにシェフがチーズインハンバーグを完成させて2人に出す。
ロックがハンバーグをナイフで切ると中に入っていたチーズが流れ出てくる。
「うん、これだよ。」
ロックはハンバーグを口にすると笑顔で親指を立てる。
「美味しいよ。最高だ。」「ありがとうございます。」
シェフが礼を言う。この日、レストランでは2つの新メニューが加わる。リースもチーズインハンバーグを堪能して、これならヒットすると確信する。
リースは、菓子パンについてもシェフに相談する。シェフは努力の末、あんパン、クリームパン、チョコレートパンを完成させる。
しかし、菓子パンは料理と一緒に出すには甘すぎた。そのため、菓子パンはデザートメニューにひっそりと加えられる。
レストランは、1週間休業して、店名を「リースの食卓」と名前を変えて開店する。そして、1階にはゼーテ商会コシニア支店開店予定と看板が掲げられる。
街の人々は街の一等地に掲げられた看板を見ていくが、店の客の入りは変わっていない。そこへカリーナが様子を見に「リースの食卓」へ来店する。彼女はウエイターに言う。
「この店のおすすめは何かしら。」「ハンバーグとチーズインハンバーグです。デザートには菓子パンがおすすめです。」
「では、チーズインハンバーグと菓子パンをお願い。」「菓子パンはどれにしましょう。」
「あんパンと言うのをお願います。」「ご注文承りました。」
カリーナは以前と変わっていない店の雰囲気に少々がっかりする。メニューは変えてきているようだが期待はしていなかった。
チーズインハンバーグが温野菜を添えて出される。それに白パンが出てくる。カリーナがハンバーグをナイフで切るとチーズが流れ出てくる。肉の塊にガードが入っているのね。
そしてハンバーグを口にするとこれまで味わったことのないおいしさにびっくりする。
カリーナがチーズインハンバーグを食べ終えると白パンが出てくる。カリーナはウエイターに言う。
「どうして、白パンを出すの。」「こちらはあんパンになります。」
カリーナは、あんパンを手に取ってちぎってみると中に赤豆を煮込んだ様なものが入っている。口にすると甘さが口に広がる。彼女はこれだけでもパン屋をやっていけると判断する。
これは、店に固定客がつくし、話題になれば繁盛するだろうと考える。カリーナは屋敷に帰るとリースに言う。
「リース様、レストランはきっと繁盛しますわ。3階のエステサロンはやめて、パン屋を経営してはどうですか。」「そうですが、職人がいません。」
「職人の手配は私にお任せください。代わりに菓子パンを卸してほしいのです。」「香水店で売るのですか。」
「いいえ、次はカフェを出そうと考えています。あの菓子パンは話題になりますわ。」「分かりました。お願いします。」
リースはカリーナに引っ張られる形でパン屋「リースのパン」を開店することになる。
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